【対談】「衆議院選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているのか」石田祝稔氏(公明党政調会長)2/2

言論NPO撮影・作成

 石田氏の公約の説明を踏まえつつ、公明党の公約に代表の工藤泰志が切り込みます。

 同時に、言論NPOの評価にかかわっていただいている湯元健治氏(日本総研副理事長)、小黒一正氏(法政大学経済学部教授)にも加わっていただき、公明党の公約を掘り下げてみたいと思います。

私立高校無償化は、2%の増税とは別に財源を工夫する

工藤:どうもありがとうございました。今、お話をお聞きしてほっとしました。生活の視点の話をしているわけですね。ただ、有権者から見ると、この政策が実現できるのか、実現するということがどういう意味を持つのかを聞かなくてはいけないわけです。では例えば、私立高校の授業料無償化にはどれくらいかかるのでしょうか。

石田:約840億円です。これは2%の増税とは別立てでできるだろうと思っています。8日の党首討論で山口代表が総理に投げかけた時も、検討すると言っていたようです。840億は大変な額ですが、1兆円とか何千億円とかいう話ではないですので、2%とは切り離してもできるのではないかと思います。もちろん財源の工夫はしなくてはいけないのですが。

工藤:それに関連して、今回の2兆円を使途変更するということは、本来赤字国債を削減するために使おうと思っていたものをそちらに使うわけですから、結局将来世代の負担になるということですよね。結果的に負担を先送りしていくことについてのご意見はどうでしょうか。

石田:ラジオを聞いていてこういう意見がありました。「消費税が平成元年に導入されてたかだか30年弱だ。これから生まれる人は一生消費税を負担しなければならない、これは大変だと」。

 なぜ教育に注目するのかというと、教育によって本人の未来を開くというところに重要性があります。実際は経済的な理由で学校に行けない人がいるのは間違いないです。教育によって能力を開発できるチャンスができる。日本の経済を考えても、潜在成長率がなかなか上がらない。どうしても、(潜在成長率の3要素である)資本と労働力と生産性とを考えると、労働力が減っている状況では、一人一人の生産性を上げなくてはならない。そのためには教育しかない。

 教育投資を受けることによって、将来のパフォーマンスをあげていただくことが可能ではないかと思います。

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既に社会保障費の伸びを抑えている中で、「この世代は守らない」とは言えない

工藤:社会保障に関連して、100年生きて幸せに暮らせるというシステムなどがなければ、長生きできることが不幸になり得るわけですね。2025年、団塊の世代が後期高齢者になる時に、今でもそれまでに何十兆円と必要になると言われているのですが、誰がどういう形でその負担を負うのか。また守らなければならないのは誰なのか。公明党はどういうふうな考え方を持っていますか。全世代全て、現役世代も引退した世代も将来の世代も全てなのでしょうか。

石田:年金一つとっても、今までであれば「現役中に掛け金を払い、退職して受け取る。私は掛け金を全て払っています」という形でした。ただ、今は消費税という形によって、年金を受給している世代も掛け金の原資を払ってもらっているわけです。全世代型の社会保障ということになると、全世代で負担も公平に分かち合ってもらわなければならないということになるのではないかと思います。

 来年、医療・介護の報酬の同時改定、さらに生活保護の見直しがあります。障害者の法定雇用率の見直しもあります。ですから、選挙が終わって来年度予算編成の段階ではものすごい課題があります。

工藤:それは選挙では触れないのですか。

石田:これは予算編成過程でこれらはやるかと思います。同時改定はもう決まっていますので、重点化・効率化は、去年も実は社会保障の伸びを5000億円に抑えるというのをやったのですが、非常に大変でした。

工藤:さっきの守るという話ですが、全部を守ろうとしているように思います。それは可能なのですか。

石田:「この世代は守るけれど、この世代は守らない」ということは言えないわけです。それをどうするか。例えば、高齢者から見たら若い世代は自分の子供や孫の世代でもあるので、年金一つとっても受給者世代にも「辛抱してください」ということになっています。掛け金についても、厚生年金についてはやっと今年で18.3%と一番上までいきましたし、国民年金も掛け金が上限までいきました。政府も基礎年金の半分は出します、これは税金ということですから。様々にやりくりをしてやっていかなければならないと思います。

2025年の社会保障原資をどう賄うか、2019年の参院選では提案を出す

工藤:今の状況では、確かにマクロ的な(団塊の世代が後期高齢者になる)2025年問題もあるのですが、個人の生活レベルでは育児が終わったら介護もあり、大変な状況になっている。年金の話にしても、モデルではなく具体的な話にしてみるとかなり少ない。そこに目線を入れた政策は提起されていませんよね。

石田:年金についてはある一定の約束のもとに、「何年掛け金を払ったらいくらもらう」ということになっているわけです。例えば私も国民年金をもらうわけですが、妻とは「何とかやっていくためには二人とも元気でいなければならない。それで国民年金+付加年金をもらっていかないといけないと。一人になってはとてもやっていけない」と話しています。もともと国民年金は、定年がない、仕事をし続けるという前提の制度設計なのに、今は無業の人が結構入っている。そこは大前提を変えることができるのか、なかなかちょっと難しいところがあると私は思います。一人一人のことを考えて、本当にやっていけるんですかと言われると、自分のことを考えても大変だなと正直思います。そうすると原資をどこから持ってくるのかという課題があります。

工藤:それは公明党としては、ある程度の提案を出さなければいけないのではないですか。

石田:一つは、今の基礎年金を国が半分持っているところを、これをもうちょっと増やせないかという議論ももちろんあります。それは税金が増える話になります。それに介護もある、医療も増えていく、こういうことを一体として、どうやっていけるかというのが非常に大きな課題です。2025年に団塊の世代が後期高齢者になるということを考えるとあまり時間はない。社会保障をどう全体として支えて行くかというミニマムアクセスが必要です。

工藤:選挙が次にいつあるのかということを考えると、今回こそ2025年問題のプランを競わないといけないのではないですか。

石田:これは私としては、今年後半、全国各地に11ヵ所に赴いて、地元の政策、生の声を聞いて年内に取りまとめようと思っていたのですが、突然選挙が早くなってしまいましたから、次の参議院選挙までに準備したいと思います。

財政収支目標は堅持するが、その年限は今のところ示せない

工藤:財政問題について、安倍さんはプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化についての2020年目標を諦めました。黒字化の目標自体は堅持しているのですが、2020年というのは断念したということです。しかし、すでに消費税の使い道変更がなくとも、2020年の達成は厳しいという試算が政府発表で出ていました。ということは、自公政権は財政再建に熱心じゃないのでしょうか。公明党のマニフェストにもあまり書いていません。

石田:プライマリーバランスは2020年までは無理だろうと、我が党としては考えています。今回の消費税増税がなくてもなかなか難しい。しかし旗は降ろさないので、いつまでに達成するかというのは非常に大事な課題です。いつまでというのは今のところ、現時点では何年だというのは確定的に申し上げにくいです。

 しかし、これは一応、2015年に作られた財政再建計画を来年検証することになっています。2020年目標の設定時は様々な数字がデフレ状況での設定だったのではないかと思います。それをもう一度見直すということもありうると思います。総理もお考えだと思いますし、我々もしっかりすべきだと思います。現時点でいつまでに、ということを申し上げるのは難しいと思います。

工藤:マニフェストに書かないのはあまり重要性がないということですか。

石田:そういうことではないです。これは隠しておこうという意図は全くありませんでした。たぶん、そういうご質問が、消費税の使途変更の話に伴って必ず聞かれるだろうということは重々分かっておりましたが、2020年でない次の目標は、今のところなかなかお示しできない。

まず国際社会が一致し、対北朝鮮制裁の厳格な履行を。

戦争には「ならないように努力する」としか言えない

工藤:外交・安全保障の問題について、安倍さんは北朝鮮問題を「国難」だと言っています。確かに、世界的に国連決議による圧力を強めていくべきだなどというのはいいのですが、国民は「ひょっとしたら戦争になるのではないか」という不安がある。それに対して政党からきちんとした説明がないことにも違和感を覚えています。つまり、現政権があることをやった結果何を実現するのか。安倍さんは「国民の生命を守る」といったのですが、公明党はどういう立場で、それを実現するためにどうしようと思っているのでしょうか。

石田:外交問題について、特に北朝鮮問題に限ってのお話だと思いますが、私たちは戦争には反対です。しかし戦争は反対でも、日本海を挟んだ隣の国がミサイル・核開発を進めており、指導者の意図がわからない。意図がわからないままに能力だけが向上していっている。これは日本だけでどうにかできることではありませんので、国連の安保理もこれまでより厳しい決議を出しましたが、まず穴を開けないような実践をやってもらう。あれは確か3ヵ月くらいで報告を出すようになっていると聞いています。国際社会で一致して考えていく必要があると思います。特に、ICBM(大陸間弾道ミサイル)となるとヨーロッパも能力の範囲に入ってくるわけです。ヨーロッパの国の中にも北朝鮮のミサイルの射程に入っているという不安を持っていると思います。核ミサイル・拉致については国際社会と連携して取り組んで行く必要があると思います。最後に、「とにかくやってしまえ」というのには反対です。

工藤:北朝鮮を核保有国として認めることはしないということでいいですか。

石田:はい。核保有国として認めたら、ずっと意図がわからない国が隣にあるということになります。早くNPT(核拡散防止条約)に復帰してもらいたいと思います。

工藤:安倍さんは一生懸命頑張って、外交政策で解決するように努力しているのですが、トランプ政権がある時軍事行動を決断し、日本政府に「戦争になる」という連絡が来たとします。そういう時、公明党はどうしますか。

石田:そういうふうにならないように努力するとしか言いようがないですね。圧力が必要だと言っていますが、向こうに政策を変更させる、(国際社会は)本気だと考えてもらうということだと申し上げています。(1994年、核開発を一時凍結する米朝枠組み合意にあたって)金日成総書記のところにカーター元大統領が行った時が、すごく緊張感が高まった時でした。結局、カーターさんが行って、小康状態になったのですが。それから20年経って、どんどん核を開発してしまったという歴史があります。国際社会に復帰してもらい、国際社会と連携して自国民の幸せのために努力してほしいと思います。

工藤:公明党には、中国と話をして何かやるというアイデアはないのですか。

石田:中国はもうすぐ党大会があります。それが終われば、今の習近平政権の体制が固まってまた新たな動きがあるかもしれません。

 また、ロシアが実はキーパーソンなのではないかと。ロシアの方が影響力をもっているのではないかと、考えています。

 また、ある人が言っていたのですが、日本の政治家も外交政策関係者も、ロシアの新聞をあまり読んでいない。

公明党の「原発ゼロ」とは新設をしないこと。

2030年の電源構成見直しはこれからの課題

工藤:原発の問題について、政府は2030年までのエネルギー基本計画で、原発の比率は20~22%という形を描いて、その中でやろうとしています。これ自体が達成するかどうかに関して、我々の検証ではかなり難しいとされているのですが、公明党のマニフェストを見ると「原発ゼロを目指す」と書かれています。政策が政府とかなり違うのではないでしょうか。

石田:一つは新設を認めないということです。再稼働については、原子力規制委員会が審査し、地元自治体の理解があればよいのではないかと。ただ、40年という稼働年数の縛りがありますね。再稼働を認めても、一回だけ、20年しか延長できない。そうすると自ずとフェードアウトしていくわけです。地元である四国の伊方の第一原発も今度廃炉になります。

 ただ、そうなった時に、再生可能エネルギーが間に合うのか。今、再生可能エネルギーに使われているお金が電気代の1割くらいあります。そうしたことに耐えられるのかということを考えていかなくてはいけないと思います。東日本大震災以来、原発が全部止まり、再生可能エネルギーを早くやらなくてはいけない。それで、当初インセンティブをつけるために、太陽光発電に1キロワット40円と、ちょっと高い値段をつけたのですが、逆に風力や地熱に目が向かなかったのです。

工藤:公明党は閣議決定についても参加しているわけですから、政府の公表している2030年の電源構成は認めているということでよいですか。

石田:それは認めています。

工藤:そのあとの話として、原発ゼロにということですね。いつごろゼロになるのでしょうか。

石田:私も完全には把握していませんが、稼働年数は40年または60年という縛りがあるわけですから、100年かかるということはあり得ないと思います。

工藤:そうすると、火力発電に切り替えるということですか。

石田:そういうことではありません。火力についてもパリ協定ができて、26%削減しなくてはいけない、2050年には80%削減する、となっています。今年、エネルギー基本計画の3年ごとの見直しもしますから、原子力と再生可能エネルギーの進み具合、石炭などを使った発電をどう組み合わせるか考えていくかは課題だと思います。

工藤:今回の選挙は何を問うのでしょうか。

石田:将来の安心でしょう。

工藤:だとしたら、そのプランが出ていないというのは問題ではないですか。

石田:おっしゃる通りかもしれません。我々の考え方の中での教育ということでお示しをして、不安を払拭して本人の能力を発揮できる、それによって日本の未来を開くという、そういう提示をしているわけですが、もちろん他に目を瞑っているわけではありません。それは特に与党・政府になったら、1日も行政は停滞できません。我々も党の立場でも行政については責任があるということですので、これからはいろいろなご意見をいただいてやらなければならないなと思っております。

工藤:今回の選挙の構造や意味がちょっと見やすくなったと思います。

世代間の社会保障財源の配分を、公明党はどう考えるのか

湯元:安倍総理が今回の選挙の大義として、2%の消費税の引き上げ分の一部を教育無償化に当てるという問題提起をされたと思いますが、ここから三つ、本当に考えていかなくてはいけない課題が浮かび上がって来ていると思います。

 一つは全世代型の社会保障、非常に聞こえが良いのですが、教育というところにもお金をかけることになります。しかし、年金・医療・介護についてもこれからものすごく大変になっていく。この両方の中で、現役世代と高齢者に対して、現役世代をもう少し大事にしましょうということだと思うのですが、さらに財源を集めてきて現役世代への給付を増やすという考え方なのか。それとも、高齢者向け社会保障はまだ効率化する余地があって、効率化によって現役世代を手厚くしようとされるのか。現役世代を重視していくというトレンドは、ヨーロッパなども含めて世界的なトレンドになっているので、考え方としては非常に賛成なのですが、財源配分をどう考えられておられるのかがわからないというのがまず一点です。

 二点目に、消費税の使途変更によって2020年度のPB(プライマリーバランス)黒字化は不可能になっていますし、その先もどうなるのか不透明になっている。消費税は与野党とも10%までの話しかしていませんが、社会保障のことを考えるとその先どうするのかという話がある。公明党のご努力によって軽減税率が入るという形になりますが、軽減税率を入れれば入れるほど税収は少なくなっていきますから、そうすると本来軽減税率がない場合と比べて、消費税の上げ方が大きくならざるを得ないと思います。そういう将来展望をどうのようにお考えになっているのかというのが二つ目です。

本来、無償化に先立つ、教育そのものをどう変えていくかというビジョンは

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 三つ目は、教育無償化という政策が、基本的には人づくり革命につながるし生産性向上につながるというお話があったと思うのですが、ただ単に保育や高等教育を無償化するだけで生産性が上がるという方向につながるのかというのがちょっと分かりにくい。逆にいうと、日本の教育というものをどういうふうに変えていくのかというプランが最初にあって、「それにお金がこれくらいかかるので消費税の税収を使う」というのであれば、順番としては非常に分かりやすいのですが、先に無償化ありきという印象を受けます。特に所得の再配分政策や教育格差の是正をしていかなければいけないというのは大事だと思いますが、社会保障の財源がどこから出てくるのかということを考えると、日本の競争力を強化し、海外で稼ぐ力を強めて、その税収でやっていく。その鍵はやっぱり人材だと思うのですね。

 ということは、教育無償化よりももっと優先されるべき課題というのは、高等教育や社会人になってからの職業教育も含めて、世界の競争力に勝ち抜いていけるグローバル人材だとかイノベーションを引き起こしていく人材だとか、そういった人たちをどういうふうに育成して行くかだと思います。そういうところが今回の各党のマニフェストからはすっぽり抜けており、無償化をどこまでやるかで争っているような感じがあります。それについてどのようにお考えでしょうか。

消費税10%では未来永劫もたない。

納得できる使い道を示して選挙でお願いするのは当然

石田:大変大事な視点だと思います。一つは、全世代型にするのがどうかという話ですが、我々も公明党は、教育もそうですが福祉も全力でやってきましたので、どちらかというと高齢者に偏っているのではないかという意見はずっとありました。総理が「全世代型」とおっしゃったのは、高齢者を削るという意味では必ずしもないと思いますが、今までどちらかというと偏っていたものを、本来社会保障ということで使うという大前提ですから、社会保障と税の一体改革で年金・医療の他に少子化対策・子育てが入ったというわけです。そこで教育ということを出しているわけです。消費税の使途変更は9月25日に正式に話があり、党としてはあまり時間がなかったのですが、我が党がもともと言ってきた方向性と同じではないかということで、9月26日に我々も了解したわけです。

 社会保障については、税金も大変だけれど、年金とか医療の保険料も高い、ということが言われます。年金については、一応、保険料率18.3%ということにしています。これからまた標準報酬月額が上がれば当然、保険料は上がるが、これから考えていかなければなりません。

 あとは、プライマリーバランスの話で、消費税10%の先の話が全くない。ヨーロッパの話もいろいろ出てきますが、消費税の税率そのもので言えば、日本の10%は必ずしも高いものではありません。そこも含めて、間接税でどう賄っていくかというのは、すぐにどうこうできる問題でもありませんが、逆に未来永劫10%で行くと思っている人も誰もいないと思います。そこで、納税者の納得できる使い道を示しつつ、選挙でお願いする。これは当然のことです。

湯元:少なくとも与党の間では議論だけでも開始しないと、時間だけが経ってしまうということですが、これまでは、議論そのものさえ封印されてきました。

石田:今のところは、10%に上げることは決定しましたが、2度延期しました。現時点では、10%への引き上げを予定通りを実行するかどうかというところに収斂しています。与党の間では、大体は予定通り増税をやる。野党の人たちは凍結だとか、反対の人もいるので、まず与党の中で議論をクリアして、そのうえで、将来これで行けるのかという議論をやらなければなりません。

湯元:次の選挙までにということですか?

軽減税率は必ず実行する

石田:2019年ということは、参議院選挙をまたぎますが、参議院選挙のときは、今の社会保障の全体像をどうするのかという問題もあります。それとリンクすると、財源論も当然出て来るので、それをどうするのかというのは避けては通れません。ただ、ここでいつまでにどうしますという結論を出すことはできません。

 あと、軽減税率の話で、制度設計をしたときは、軽減税率による税収減は約9000億という計算でした。その時も、4000億円分の財源は確保ができるという話になりました。残りの5000億~6000億円をどうするかというのは決着がつかず、自民党内からも、無理ではないかという声があった。軽減税率をやれば当然減収があるのはその通りですが、GDPが膨らんで、消費の幅が増えていけば、当然、減収の幅も大きくなります。軽減税率は、約束通りやらなければならないと思っています。

 教育の無償化について、我々は幼児教育については段階的にやっていて、第三子まである家庭については、所得によっては無償化をするとか、徐々に進めてきてはいますので、我々が提案をしてきたこと、総理もそこの重要性は分かっているのだと思います。私は去年、給付型奨学金について総理に提言に行きました。総理は教育に熱心です。ここまで教育に力を入れているとは思わなかったので、いい意味で驚きもあり、今回教育に力を入れることには賛成です。

 あと、日本の科学技術のレベルについて、論文引用数が非常に下がってきています。科学技術の振興について、GDPの4%、20兆円以上を当てるという基本計画があります。あと、やはり大学そのものも変わっていかなければなりません。任期付き採用の教諭が増えてきているので、なかなか落ち着いて研究ができないという話も出てきています。このままいくと、ノーベル賞も取れないのではないかという心配をする人もいます。あと、大学も、民間と一緒に研究をやってもらいたい。民間の大企業は、海外の大学と連携をすることが多いのです。逆に、日本の大学で良い研究をしても、なかなか経済界でいい評価が得られず、結局アメリカで技術が使われてしまいます。これは薬のことで関心を持っているのですが、免疫療法のオプジーボも京都大学の先生が開発したのですが、日本であまり交渉ができなくて、結局外国の企業に売ってしまいました。それを日本企業が買って、メラノーマの治療に使えるということで大きく広がって、去年薬価の問題が出てきました。日本はいろいろな種は持っていますから、産学官でいい意味での連携をもっとしていく必要があります。

工藤:公明党の政策は全般的に需要側、つまり、学ぶ人とか、患者の人たちに焦点を当てています。ただ、今、湯元さんが言ったのは、供給側のことをきちっと考えていく政策も同時に出していかないと、バラマキとは言わないが、需要だけをまかなっていくことは難しいと思うのです。公明党は需要側のしか出さないと決めているわけじゃないのでしょうか。

石田:そんなことはありません。結党以来、野党が長かったので、政府に「こういうことをしろ」と言うのが多かったのは間違いありません。それは一種、神の声を政治に反映するということをやってきました。そうは言っても、与党も長くなっているので、財源についても、需要だけでなく、供給側の論理もしっかりしてくれというのは、それはそのまま真摯に述べていると思いました。

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社会保障の選択と集中、奨学金の受益と負担の枠組み、

国と地方の関係、についての考えは

小黒:今の話に関連して、3つほど質問します。社会保障給付費は118兆円くらいになっていますが、10年前は90兆円くらいだったので、10年間で26兆円くらい伸びています。つまり、消費税1%ぐらいのスピードで伸びています。医療・介護給付費だけでは足元で50兆円くらい、2025年には75兆円なので、これは1年ごとに平均すると、2.5兆円くらい伸びることになります。いくつかの学者が推計したりするが、もし、社会保障をかなり効率化しないと、消費税換算にして30%くらいに引き上げないと、財政の持続は可能ではありません。私も全世代型というのは関心がありますが、やはり、税の負担については、負担できる人には負担してもらって、それを本当に困っている人にだけ集中投下する。給付奨学金などはその典型例だと思いますが、そういう形にシステムを変えていかないと、なかなか立ち行かなくなるのではないでしょうか。年金なども、国庫負担に入っているわけですが、カナダのクローバックのように、ある程度年金をもらっている人については、公費の国庫負担の部分を削って、それを低年金の人に入れていくということも必要だと思います。そのような方向感を持っていないのか、というのが一つ目です。

 もう一つは、今の教育と関係しますが、私立高校との関係の話で、大学の場合は無償化すると3.7兆円ぐらい必要で、現実的には、一般の税金でやるのは難しい。あと、大学は中学とか高校と比べると進学率が落ちるのですが、個人が授業料400万円くらい払えば、あとは高卒と大卒で、年収が5000万ぐらい違う。つまり、受益と負担の関係が個人に帰着しています。ただ、裏側で起こっているのは、1997年ごろが典型例だと思いますが、つぶれないと思っていた銀行などの機関がつぶれたり、雇用も二極化したりしてきて、非正規の人も増えているので、その人たちが嫌になっています。そうすると、子供が大学に行くときに、家庭環境が厳しいということもある。今、政府で議論していることは、一般財源を使うと大体3.7兆円ぐらいになると思いますが、例えば、オーストラリアのように、公明党のマニフェストにもある(卒業後の所得と返還額が連動する)所得連動型の奨学金、無利子と有利子の二つがありますが、そこを拡充していくということもあります。今の日本の制度を前提にすると、今の日本学生支援機構の所得連動型奨学金は、財政投融資を使ってやっています。財投は見かけ上国債です。最後にお金を返すときは、奨学金を受けた人が返すので、まさに、受益と負担がマッチングしているので、そのような方向性で考えているのか。聞きたいのは、一般会計のようなところで財源を調達して高等教育の負担軽減を考えているのか、そうではなくて、受益と負担をマッチングして、拡充していくのか、ということです。財投であれば、3.7兆円というのはそんなに大きな額ではありません。そのようなスキームを考えるうえで、どのような議論をしているのか、というのが二点目です。

 次に、国と地方の関係ですが、これは希望の党が道州制のようなものを考えてきています。自民党と公明党では、地方創生という形で、厳しいところの自治体をいろいろな計画を作らせて、どうにかやっていこうということですが、やはり、今の人口動態では、2050年を考えると、人口が半分以上に減ってしまうことになるエリアが6割以上と、非常に厳しい。やはり、今のままの国と地方の関係では難しい。特に、医療とか介護を含めても、人口の規模感があるので、高齢化もあるとすると、厚生労働省も地域医療構想 など頑張っているとは思うが、やはり、国と地方の関係も見直す必要があります。その辺をマニフェストの中に読み取れるか、というのが三点目です。

高所得者の年金受給停止は、制度の根幹にかかわり難しい

石田:社会保障の効率化ですが、2025年に150兆円くらいになる社会保障給付費について、平成29(2017)年度予算としては32兆円くらいになり、何とか伸びを抑えようということで、頑張ってはいます。

 年金については、基礎年金のうち、本人に払われる分の半分は国庫負担です。以前は3分の1でしたが、これは100年安心プランで、国も負担しようということで出しています。この、税金でお金が出ている分については、給料をもらったりしている人についてはカットできるのではないかというのは事実です。これは、出ては消え、出ては消える議論ですが、かたや社会保険方式でやっていますので、掛け金をかけたい人はそのリターンとして、ある一定年齢になったらもらう。一方、在職老齢年金制度によって、仕事がある人については支給をカットするという仕組みにはなっています。社会保険で負担と給付を一対一でやっているところで、たくさん金をもらっているから国庫負担分は削るというのは、制度の根幹にかかわる。わかりやすく、私は良いよ、という人ももちろんいるとは思うが、これを制度として導入すると、やはり制度の根幹にかかわるので、導入できるかは難しい。

奨学金の財源をどう調達するか

 教育について、大学は進学率を考えると、全ての人が行っているわけでもありません。高校は97%進学しています。幼児教育については、必ず通る道です。大学無償化については、去年の党大会で入れようかと思っていましたが、これは党内で理解が得られず、無償化を視野に入れて授業料免除枠を拡大します。今年の予算でも拡大したので、来年の30年度予算でも減免枠を拡大します。私立についても、免除した枠の2分の1しか国が支援していないのですが、3分の2まで国が支援しようではないかと。免除枠の拡大、無利子奨学金の拡大が重要だと思います。大学を全部無償化するのは難しいと思います。あとは、オーストラリアの卒業後に払ってもらうというのは一種の無利子の奨学金で、所得変動型の奨学金も今年から導入したので、今のところは平成33(2021)年の卒業生からになっています。ただ、これも実は大きな課題があって、夫婦で借りている場合もあります。月額1万2000円ぐらいで固定されていると思いますが、奥さんが子どもを産むとき、夫の給料で二人分払わなければなりません。したがって、既卒者にも適用したらどうかと考えている。大学教育については、3.7兆円の財源を今言ったオーストラリア方式で行くのかは、考えなければなりません。

 もう一つ、教育国債の話がにわかに盛り上がっていて、我々も考えようと思っていたら、自民党内で突然機運が下がってしまい、こども保険の話になってきました。こども保険は、いわゆる使用者負担が出るので、議論にはなっていません。

小黒:教育国債の方はどちらかというと、財務省的なイメージをすると、一般財源で返済をしていくというイメージで、しかも返済の原資が分からない。したがって、将来世代に負担を先送りするというリスクを考えるとなかなか難しいということになりますが、財投でやると考えると、今、財投機関でやっている奨学金は国債を発行しています。ただ、事実上その裏側には負債もありますが、債権もあって、政府の純債務で見れば、焦げ付いたりすれば別ですが膨らみません。発想は全然違います。オーストラリアも事実上、無利子奨学金の所得連動型と、あと有利子の2種類あって、全体の学生数の8割ぐらいカバーされている一方で、無利子については3~4割と言われていますので、無利子の分は相当絞ってやっているということです。

石田:総理も年内に制度設計をすると言っていて、2兆円ほど増加させると言っていますが、大学の2兆円全てを増税でまかなうわけでもないということです。そことは別に、総理も「保険や国債などもあります」という言い方で終わっている。総理も財投を考えているかもしれません。

小黒:従来型の奨学金は、政党によって感覚が違うと思いますが、例えば住宅ローンで言うと借りたものを均等に返済しなければいけません。しかし、所得連動型であれば、所得が300万円ぐらいであれば、2000円だけ返せばいい。あとは、所得連動で9~10%取っていけばよい。後は返済し終わればおしまいで、かなり負担が軽くなります。発想が違うと思います。時代の流れには合っています。

石田:そのあたりは、奨学金の議論をし出したときに我々も勉強不足だったが、オーストラリアでこのような制度があるということを初めて聞きました。もう一つ、話はずれますが、アメリカの大統領選で、クリントンさんが州立大学の授業料を無償化するということを言った。それを聞いて、クリントンさんもこんなことを考えているのか、ということを思いました。アメリカも授業料は高いですから。

 最後の国と地方の問題について、これは、憲法には地方自治の本旨のようなことしか書かれていなくて、国と地方の関係をどうするのか、その本旨という言葉だけでは分からない部分もあります。憲法改正をしたいというわけではありませんが、もう少し明確にした方がいいと思います。

首相が説明を果たしていれば加計問題は起こらなかった

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工藤:私から、皆さんが関心を持っていることを二つ聞かせてもらいます。一つは、加計と森友の問題について、公明党は何が問題だと思っているのでしょうか。内閣人事局も含めて、首相官邸の権力が強まっています。それが結果的に、総理がやらなくても忖度するような関係を作り出しているのが問題なのか。であれば、公務員制度改革を含めた議論が出て来てもおかしくない。個人の問題なのか、姿勢なのか、政権が長期化することで、それらに鈍感になっているのか、どう思いますか。

石田:私は農林水産副大臣をやっていましたが、7年前の口蹄疫のときに思ったのは、獣医師の数が足りないということです。結局、口蹄疫のときは、牛と豚を合わせて30万頭殺処分しました。ワクチンを打って、擬似患畜にして、うつさないようにしたましたが、出荷できない。全部殺処分しました。そうすると、やはり、産業動物の獣医師は、足りているという人もいるが、足りていないのは間違いありません。これは人間の医者と同じで、ソースは足りているが、偏在しているということです。そこで、西日本に大学が少ないのは事実だし、政策的には重要です。

工藤:政策的には大事だとしたら、何がダメなのですか。

石田:「友達だからダメだ」といったら逆に差別という気もしますが、最初のときに、これは大事な課題だということを敏感に反応して説明のスタートをすれば、今振り返ればよかったのだと思います。ただ、この問題には、お金のやり取りが出てきません。通常は、贈賄だ、収賄だということが出てきますが、今回はその話がありません。総理の友達だから、忖度して、行政が歪められたのではないのかと。議論して結論は出ませんが、私はやはり、総理は丁寧に説明しているのかと、そういう姿勢を見ているのだと思います。そこは、国民の目から見ると不十分ではないか。これは、行政のあり方として、公文書管理も含めて説明責任を果たすということも踏まえて、どちらが政権取るか分からないが、次の国会で大いに議論したほうがいいと思います。

工藤:最後に、憲法でも主権が国民にあるとなると、選挙は国民にとって非常に重要な政治参加の機会です。言論NPOはマニフェストの作り方を13年間評価してきましたが、言いたいことは、ある意味で願望というかスローガン的には分かるのですが、国民に痛いことも含めて説明していない、ということです。財源の問題とか、2025年問題とか、なぜそこで競わないのか。このように、選挙のときだけ甘い言葉でやってしまうと、国民が政党から離れてしまう危険性がある。特に、我々の世論調査では、政党と国会への支持が非常に低い。つまり、国民は政治に課題解決を期待できないと思っている。そこの辺りはどうですか。

石田:今回は政権選択選挙とか言われているが、今回は政策選択選挙にしてほしい。今回、衆議院選挙で初めて18歳以上の人が投票しますが、全体的に投票率を心配しています。あと、前回の選挙から約2年10ヵ月の実績について我々も説明はしますが、今日のような機会に、例えば1年経ってどうなったかという途中経過の評価もすると、よりわかりやすくなると思います。

工藤:国民が課題解決を託せるような政治を我々は期待している。

石田:最後に、マニフェストが出たときに、国民は非常に期待をします。公約が文書に明示されて、政治が変わるなという期待を持つと思うので、マニフェストが国民と政治家をつなぐ大切なものであるということを肝に銘じていきたいと思います。

【対談】「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているか」

⇒和田政宗氏 (自民党広報本部副本部長)

⇒石田祝稔氏(公明党政調会長)

⇒細野豪志氏(希望の党)

⇒福山哲郎氏(立憲民主党幹事長)

⇒笠井亮氏(共産党政策委員長)