銀行経営は悪化の一途=大規模緩和が追い打ち―日銀FSRの読み方

低金利の副作用を認めるようになった黒田総裁。(写真:ロイター/アフロ)

 「経営は悪化の一途をたどり、上向くシナリオがない」(外資系証券アナリスト)-。銀行経営の深刻な状況を示唆した報告書が金融関係者の間で注目されている。日銀が先般公表した「金融システムリポート(FSR)」がそれだ。低金利の長期化で利ザヤが縮小する中、日銀の大規模緩和が「追い打ちとなって収益低迷に拍車をかけた」(大手邦銀)ことが浮き彫りになった。

 日銀のFSRは、銀行の投融資動向や経営状態を分析したもので、半年に一度公表される。都市部を中心に不動産価格が高騰していることもあり、FSRの内容では、銀行の不動産向け融資に過熱がないかどうかが一般的な注目を集めやすい。ただ、今回は「銀行経営の苦境が一段と鮮明になった」(大手運用機関のファンドマネージャー)ことが関係者の懸念を強めた。

大規模緩和以降、銀行・信金の自己資本比率が低下

 具体的には、「地方銀行」と「信用金庫」の自己資本比率が低下傾向を強めていることだ(下図参照、FSRより抜粋)。チャートを見ると、2013年度から下向きになっている。日銀が「大規模緩和」を開始した年度であり、この緩和による市場金利の低下で投融資の利ザヤが圧迫され、「リスク資産は増えながらも、見合った収益が確保できず、資本低下を招いた」(日銀幹部)という。

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 自己資本は経営体力の目安となる指標だ。現時点で、国内金融機関は「4%の規制水準を大きく上回っている」(FSR)が、今後は低下する一方だ。地域経済は人口減少という構造要因によって資金需要の回復は見込めない。日銀の大規模緩和とそれに続くマイナス金利はデフレ脱却が絶望的となり、出口が見えなくなった。このままだと経営体力はひたすら低下する。

自己資本比率は「8%」が事実上の防衛ライン

 注意すべきは、「4%」という規制水準はあくまでも最低ラインであり、実際にはそれよりも高い「8%」が健全かどうかの判断基準となっていることだ。仮に8%割れとなった場合には、「経営状態が要警戒水域に入ったとみなされ、信用不安を招く恐れがある」(ヘッジファンド幹部)と懸念される。つまり「8%」を事実上の防衛ラインをみなせば、さほどの余裕はないのだ。

 低金利が金融機関経営に打撃を与えている状況がFSRでも示されたことを受け、日銀は金融政策運営において、「(低金利などによる)金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがある」ことを認識。そのうえで「(金融システムの)先行きの動向には注視していく必要がある」との姿勢を示した。

金融安定化のためのやむを得ない出口に

 これは、物価が2%に達成していない状況でも、低金利が金融機関経営に打撃を与え、金融仲介機能が損なわれて経済に悪影響が及ぶ恐れがあるなら、「ただちにマイナス金利を解除する方針を示したもの」(大手邦銀)と受け止められる。大規模緩和の出口はデフレ脱却によるものではなく、金融システム安定化のための「やむを得ない出口になる」(同)とみられる。

1989年入社、外国経済部、ロンドン特派員、経済部などを経て現職。1997年から日銀記者クラブに所属して金融政策や市場動向、金融経済の動きを取材しています。金融政策、市場動向の背景などをなるべくわかりやすく解説していきます。言うまでもなく、こちらで書く内容は個人的な見解に基づくものです。よろしくお願いします。

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