震災復興は、なぜ遅れるのか?

陸前高田市の被災した旧中心部。遠方に新しい商店街が見える。2018年2月著者撮影

 東日本大震災の被災地において、阪神大震災と比較して復興が遅れていることは、こちらの記事で書きました。本稿では、復興が遅れる要因について解説してみます。

被災の大きい自治体の復興が遅れている

 まず、こちらの表を見ていただきたいと思います。仮設住宅の供与期間別に被災三県の市町村を表にまとめたものです。

福島県以外は「特定延長」でのみ仮設住宅の供与が認められるようになった。
福島県以外は「特定延長」でのみ仮設住宅の供与が認められるようになった。

 仮設住宅に関する記事にも書きましたが、岩手県及び宮城県においては、原則的に今月末をもって仮設住宅の供与は終了し、再建先が決まっているものの工期の関係で期限内に退去できないなど、特定の要件に該当する方だけ入居延長が認められることになりました(特定延長)。

 このような特定延長(表の中段)が認められたのは、岩手県で6市町、宮城県で6市町、福島県で2市町です。帰還困難区域であるため一律延長(表の上段)が認められた9市町村を加えたこれら23市町村が、復興が遅れている自治体といっていいでしょう。逆に表の下段にある多数の自治体は、既に仮設住宅がないか、来月からなくなるので、(少なくとも住宅再建に関しては)復興が完了していると考えていいでしょう。

 赤字で示した上段と中段の自治体を眺めていてわかることは、単純に「被災が大きいこと」(津波被害が甚大か、帰還困難区域)です。「復興の遅い・早いは自治体のマネジメント能力の差」あるいは「住民主体で復興を進める町は復興が早い」という意見もよく聞きますが、被災自治体の復興に関わった経験からすると、それらの差はあったとしても微差にすぎず、基本的には復興に要する時間は被災の大きさに比例すると考えます。重症患者はそれだけ回復に時間がかかるのが実情なのです。

土地に関する諸制度の改正が必要

 被災の大小が復興スピードを左右するとしても、全体の復興スピードをもう少し早めることはできなかったのでしょうか。筆者は、陸前高田市での経験からも、現行の土地に関する諸制度が要因の一つだと考えます。

 例えば、陸前高田市では、津波被災土地の再生と、今後の津波対策のため、同市内の高田町と気仙町に地盤のかさ上げ工事を計画しました。しかし、このかさ上げ工事着手のためには、2,000人以上に及ぶという地権者全員の同意を得る必要がありました。なぜなら、津波により建造物が消滅しても、現行法制度上、土地所有権は消滅しないからです。

陸前高田市内に建設中の気仙小学校。2018年3月同市職員永山悟氏撮影
陸前高田市内に建設中の気仙小学校。2018年3月同市職員永山悟氏撮影

 無論、2,000人の地権者の多数からは、すぐに同意を得られますが、ごく少数からは、(地権者が死亡したため相続手続きがあることや、県外の地権者も存在するため)同意を得るのに時間を要したり、同意を得られない場合があります。そして、かさ上げ予定エリアの1人でも同意が得られなかったら、工事はできないのです。

 他にも、防災集団移転促進事業は自宅を失った者が高台等に移転する仕組みですが、自治体が取得しようとする移転先の地権者の同意が得られない場合、自治体としては土地収用法の対象外でもあるからそれ以上のアクションを取ることができません。国の予算があっても土地の取得ができなければ、先に進めないのです。結果として、移転先を新たに探さなくてはならず、時間と労力を浪費しました。

陸前高田市内の防災集団移転の予定地(2014年7月).陸前高田市提供
陸前高田市内の防災集団移転の予定地(2014年7月).陸前高田市提供

 これだけではありません。2013年3月13日付岩手日報によれば、大槌町では新たな消防署などの用地取得を断念しました。取得しようとした土地には登記上8人の地権者がいましたが、その中には明治時代に亡くなったまま相続手続きがされておらず、正規の法定相続人をたどると、この土地だけで地権者の数は100人以上になったといいます。これらの地権者は全国に散らばっており、所在地を突き止めるだけでも困難を極めます。結果として、町は2012年11月にこの土地の取得を断念しました。大槌町だけでなく、こうした所有者不明土地の事例は被災各地で見られたのです。

 これらは、災害時の定めがないために現行制度が壁となり復興が遅れたと考えられます。こうした教訓を今後の災害に生かすためには、「災害対策基本法」や「大規模災害からの復興に関する法律」等に災害時特例を設け、緊急時・復興段階で必要な事業には手続きの撤廃・簡素化や財産権への一定の制約を検討すべきだろうと考えます。