フランスに続いてドイツでも大規模ストライキ、その原因とは
フランスでは今年1月、マクロン政権が年金の支給を開始する年齢を現在の62歳から64歳に引き上げるなどとした制度の改革案を示したのに対し、労働組合側が激しく反発。7日、年金の支給を開始する年齢を64歳に引き上げる制度改革に反対するデモやストライキが全国規模で行われ、社会の混乱が深まった。政府が憲法の規定を用いて採決なしで強制的に採択したことにも反発している。
フランスのストライキで製油所稼働率が通常を大きく下回っていることもあり、27日にはそれが原油先物の上昇要因ともなっていた。
フランスに続き、今度はドイツ全土の公共交通機関で、過去30年間で最大規模のストライキが広がった。歴史的な物価高で実質所得が大きく減るなど家計が圧迫され、大幅な賃上げを求める声が高まったことによるもの。複数の都市で高速鉄道「ICE」の運行や空港業務が止まるなど影響が少なくとも数百万人に及んだとされる。
昨年は年初から新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンなどが緩和され、経済の正常化が意識されるとともに、サプライチェーン問題などによって物価に上昇圧力が加わった。そこに2月のロシアによるウクライナ侵攻によって、天然ガスや小麦などの穀物価格が急騰し、特に欧州では物価が大きく上昇してきた。
物価の上昇とともに賃金も上昇してきたものの、物価の上昇に追いつかず、結果として家計が圧迫されてのドイツのストライキとなった。
新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響もあったことで、各国政府は積極的な財政政策を行ったことで政府債務も増加した。フランスのマクロン政権は公的支出の軽減と財政再建を優先し、年金改革を行おうとしたところ国民の反発が起きた格好となった。
日本では欧米と比較しては物価の上昇ピッチは特に消費者物価指数では遅かったものの、しかし、それでも実質的に前年比4%もの上昇となっている(2月の政府の対策によって3%台となっていた)。
賃金は上昇しつつあるが、物価の上昇には追いついていない。欧米ではインフレ政策として中央銀行が大幅な利上を実施。それによって物価上昇に応じて金利も上昇した。しかし、日本では金利は上昇するどころか、日銀が無理矢理に抑え込んでいる。
いまのところ日本ではストライキなどの動きはないが、どこかおかしいとの見方も次第に拡がってくる可能性はある。物価上昇に見合った賃金上昇も必要ながら、金利が付かないことに疑問を持つ必要もあるのではなかろうか。