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世論調査で「日銀の金融緩和政策を見直すべきだ」が過半数に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 円安が進む中で日本銀行の金融緩和政策について過半数の人が変更すべきだと考えていることが、毎日新聞が公表した10月の世論調査で分かった。黒田東彦総裁は金融緩和を継続する考えを示しているが、円安と物価高に苦しむ国民から支持を失いつつある(24日付ブルームバーグ)。

 ブルームバーグの記事は24日の11時32分に出ていたようだが、私はすぐに気がつかなかった。ツイッターのトレンドに「金融緩和」とあって、いったい何に反応しているのかとみたところ、この記事が発端であった。

 元々の調査は毎日新聞が行ったものだが、毎日新聞のサイトを確認したところ、下記のように金融緩和については記事では取り上げていなかった。また世論調査結果も毎日新聞本紙などでなければ確認できない格好となっていた。このためブルームバーグが取り上げなければこれほど騒がれたものにはならなかったかもしれない。

「コロナ水際対策緩和「妥当だ」49% 毎日新聞世論調査」 https://mainichi.jp/articles/20221023/k00/00m/010/195000c

 ブルームバーグの記事によると、今回の毎日新聞の世論調査は22、23両日に実施した。「日銀の金融緩和政策について、どう思いますか」との問いに、「見直すべきだ」が55%、「続けるべきだ」は22%、「分からない」が22%となっていた。

 この結果をみて、どうして過剰な反応が見られたのか。

 そもそも日銀の金融政策そのものへの国民の関心はそれほど高くないはずであった。金融絡みの記事やコラムを書いている私のような立場にいると、ほかの金融に関する記事に比べて、日銀絡みの記事への関心がそれほど高くないことは感じている。だからこそ、今回の「見直すべきだ」が55%となっていたことに驚いた。

 過去の数値をみていないので、突然、大きく跳ね上がったのかどうかは確認できない。少なくとも「分からない」が22%に止まっていることからみて、金融緩和への関心が高まっていることは確かといえる。

 その要因としては円安や物価高があろう。円安の要因としてメディアでも日銀が金融緩和政策を維持していることが挙げられている。円安は物価高の要因である。さらに物価に応じた金利ももらえない。それらに対して疑問を持つ人が過半数にも達してきたということである。

 今回の調査では、岸田政権の物価対策に関しては「評価する」は11%、「評価しない」が75%と大きく上回った。内閣支持率は27%と前回9月調査より2ポイント低下した(24日付ブルームバーグ)。

 政府・日銀は円安に対して日銀の金融緩和の修正ではなく、「為替介入」で対処しようとしている。物価対策にも金融政策の修正ではなく「財政政策」で対応しようとしている。

 これについても国民の多くは疑問を持ちつつあることが、今回の世論調査結果からもうかがえる。どうして内閣支持率が27%となってしまったのか。何かを変えなければいけないものを変えてこなかったことで、ますます深みははまっていきそうなのが、現在の政府・日銀のようにも感じられるのである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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