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市場原理を完全に壊している日銀

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 ここにきて欧米の国債利回りが乱高下している。米10年債利回りの推移をみると6月半ばに3.5%を付けたところでピークアウトした。いったん上昇トレンドが終了し、そこから低下傾向にある。

 これは米国債の利回りだけでなく、ドイツやオーストラリアの10年国債の利回りの推移をみても同様の動きをしている。

参考「三井住友銀行 マーケット情報(国債利回り)」

https://fund.smbc.co.jp/smbchp/main/index.aspx?F=mkt_list_bond

 このように各国のファンダメンタルズには多少の違いはあれど、いわゆる長期金利は欧米やオーストラリアなどは似たような動きとなっている。

 米国債がひとつのベンチマークとなっており、その動きの影響を受けやすい面もある。東京株式市場が前日のニューヨーク株式市場の影響を受けやすいことからも、それがうかがえる。

 ところが、日本の10年債利回りは0.2%あたりから0.25%の間での上げ下げとなっており、米国債などとの連動性は完全に失われている。

 日銀が長期金利を0.25%で押さえ込んでいるから当然であるとのご意見もあろうが、これは実はおかしいのである。

 米国債が何を理由にどう動いていたのか。これは日本の債券市場関係者にとっては非常に重要な情報となる。

 日本は鎖国をして単独で金利を形成している国ではない。市場参加者は海外の金利動向を含めて、各種情報を得た上で、試行錯誤しながら適切な金利形成を行っているのである。

 時には市場は間違いを犯すかもしれない。しかし、それもいずれは修正される。個人的には市場が間違いを犯すと言うよりも、いろいろな見方がぶつかり合いながら、適正値を模索し続けているとの認識である。

 その市場原理を日銀は完全に壊しているのである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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