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2025年に現金がなくなるという映画の設定に無理が

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 「夏への扉 キミのいる未来へ」という映画を観た。ロバート・A・ハインラインの名作SF小説「夏への扉」を初めて映画化したものだ。このSF小説は特に日本で人気が高い。その小説の初の映画化が日本でされたものである。

 ハインラインの小説が発表されたのが1956年であり、さすがに設定される状況は大きく異なっている。今回の映画はハインラインの「夏への扉」を基にして、現代風にアレンジしたものという印象か。

 このなかでタイムトラベルで2025年に行くという設定があったが、その2025年には現金がなくなっていた。キャッシュレスが浸透し、現金を持つ必要がないという設定であったのである。

 しかし、そういったキャッシュレスの世が本当に来るのか、やや疑問視されるような出来事が今回、起きた。

 KDDIで2日発生した通信障害は、金融、運輸など幅広い業界や気象観測データの収集にも影響を及ぼした。この影響はキャッシュレス決済にも及んでいたのである。

 「現金を用意しないと」。ツイッター上にはKDDIの通信障害を受けた利用者のコメントが並んだ(2日付時事通信)。

 データ通信がしにくくなったことで、スマートフォン決済が利用できなくなる状況が発生していたようである。

 むろん、このようなことが起きることはまれである。とはいうものの、自然災害もあり、今後一時的にせよ、電気や通信が遮断される恐れはゼロではない。

 「夏への扉 キミのいる未来へ」で描かれていた2025年の未来で、現金がない世界はひとつの理想の未来像なのかもしれない。しかし、少なくともあと3年後の日本で、こういったリスクがすべて取り除かれて、キャッシュレスの世の中となることは考えづらい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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