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英国の5月の消費者物価指数は40年ぶりの高い伸びに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 英国の国立統計局(ONS)が22日発表した5月の消費者物価指数は前年同月比9.1%の上昇となった。1982年3月以来40年ぶりの高い伸びとなり、主要7か国(G7)で最高となった。

 CPI上昇率は前月に続き、現行の統計を遡れる1989年以降で最大になった。統計局が参考用に出している過去の長期推計データを基にすると、1982年3月(9.1%)と並ぶ40年ぶりの高水準だった。前月比では0.7%上昇した(22日付日本経済新聞)。

 ONSは前年低下した食品・非アルコール飲料が上昇し、寄与度が最大となったと指摘したが、燃料や電気、食品・飲料などが軒並み値上がりした。

 この物価高を受けて英国の中央銀行のイングランド銀行は2021年12月の会合から5会合連続での利上げを行っている。

 イングランド銀行(BOE)は2021年12月16日、金融政策委員会(MPC)を開き、政策金利を年0.1%から年0.25%に引き上げた。主要中銀でコロナ禍で利上げに踏み切るのは初めてとなる。11月にも利上げかと予想されたが、いったん見送ったものの、その後も物価の上昇が止まらず、今回、利上げに踏み切った(一度目の利上げ)。

 イングランド銀行は、2月2日の金融政策委員会(MPC)にて、政策金利を0.25%から0.50%に引き上げた。MPCメンバー9人のうち4人は0.5%の利上げを主張した。国債の保有残高の縮小を開始し、償還再投資を停止する社債の保有残高の縮小を開始し、償還再投資の停止および売却を行うことも決定した(二度目の利上げ)

 過去10年の量的緩和の下で積み上げた8950億ポンド(約140兆円)の保有国債の満期償還金の再投資を直ちに停止する。2025年までに2000億ポンド余りの圧縮につながる。200億ポンド規模の社債は2023年末までに全額放出するとしている。

 イングランド銀行は、3月17日の金融政策委員会(MPC)にて政策金利を0.25%引き上げて、年0.75%とすると決定した。3会合連続の利上げは、20年余りで初めてとなった(三度目の利上げ)。

 イングランド銀行は、5月5日の金融政策委員会(MPC)にて政策金利を0.25ポイント引き上げて、年1%とすることを決定した。13年ぶりの年1%となった(四度目の利上げ)。

 イングランド銀行は、6月16日に政策金利を0.25%引き上げて年1.25%とした。2021年12月から5会合連続での利上げとなる。投票権を持つ9人のうち6人が0.25%の引き上げに賛成した。残る3人はより大きい0.5%の引き上げを主張し、ベイリー総裁の提案に反対した(五度目の利上げ)。

 次回のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)の開催は8月4日となる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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