中国国債への海外機関投資家による投資意欲が後退、明日は我が身か
中国当局は、債券取引に関する日次データについて、国内機関投資家のみに公表し、海外機関投資家への公表を停止した。事情に詳しい6人の関係者が17日に明らかにした(18日付ロイター)。
ある関係筋は、5月12日の海外機関投資家向けのデータが見られなくなっていると述べ、急激な人民元安と大規模資本流出が背景にあるとの見方を示したそうである。
どうして海外機関投資家への公表を停止したのかは定かではなく、これが一時的なものかどうかも不明ながら、ある関係筋の指摘は気になるところとなる。
3月の中国証券市場からの資金の純流出額は175億ドル(株式63億ドル、債券112億ドル)と、統計開始の2015年以降で最大となった。
中国では上海のロックダウンなどで経済が減速するなか、利上げ局面に入った米国と中国の金融政策の相違が際立っている。
米国の中央銀行にあたるFRBは利上げを開始し、今後も会合毎に0.5%の利上げが予想されている。
これに対して中国は、生産者物価は前年比8%台と高い水準ながら(3月は8.3%、4月は8.0%)、消費者物価指数は4月が前年同月比2.1%の上昇に止まっている。
これを受けて、物価上昇抑止より景気回復を優先し、中国人民銀行(中央銀行)は利下げを行ってきた。金融引き締めのFRBと緩和の中国ということで、方向性が真逆になっている。
金利の方向性の違いによって、結果として急激な人民元安を招いた。
また、中国の10年債の利回りは、2021年末時点では米10年債利回りを上回っていたが、現在は下回っている。
利回りの面からも中国国債の魅力が薄れ、中国国債への海外からの投資意欲が後退した。その結果が債券取引に関する日次データの海外機関投資家への公表停止となったとみられる。
ちなみに、欧米との中央銀行の方向性の違いは中国だけの現象ではない。
日本も同様で企業物価が前年比10%増となっているにもかかわらず、日銀の物価目標の消費者物価指数(除く生鮮)は3月がプラス0.8%(20日発表の4月分予想は2%程度)となっている。
日本銀行は緩和の手を緩めないどころか、10年債利回りをこれでもかと抑えにかかっている。
それが結果として中国と同様に海外投資家からの投資意欲を後退させかねない。金融政策の方向性の違いは円安を招く。
どうやら中国でおきていることは日本でも起こりかねないのではなかろうか。