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偽札が出回っているので現金を確認させてとの犯罪被害で、2千万円もの現金がだまし取られる。タンス預金?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 「兵庫県警は、神戸市と兵庫県伊丹市の高齢男性2人が、警察をかたる人物らから「偽札が出回っているので、現金を確認させて」とうそを言われ、計4300万円をだまし取られる被害に遭ったと発表した。県警は詐欺容疑で捜査している」(4月27日付読売新聞)

 警察が現金を確認するようなことはないので、ご注意いただきたい。家族内で注意を喚起しておくことも必要かもしれない。

 神戸市長田区の男性(82)は計2300万円、伊丹市の男性(95)は約2000万円とキャッシュカード5枚を渡し、だまし取られたとか。それほどの大金を現金で保有しているということ自体が驚きであった。

 日本ではタンス預金が多いと言われるが、本当の意味で、家に大金を保管している高齢者はそれほどまでに多いのであろうか。

 日銀の資金循環統計によると3月末時点での家計の現金・預金は1092兆円程度ある。そして1万円札の流通量は100兆円を超えているとされる。そのなかにはこういった本当の意味でのタンス預金が多く含まれるのであろうか。

 今回の警察官を装った特殊詐欺犯たちは、一部の高齢者が大金を現金で持っているということを知った上で、このような犯罪を繰り返していたともみられる。

 何故、高齢者は多額の現金を自宅で保有しているのか。銀行など金融機関に預けたくないのは、心配だからという面はあるのかもしれない。太平洋戦争後に起きた預金封鎖などを子供ながらも直接見ていた世代、もしくはそれを親などから聞かされていた世代でもある。

 さらに現金の匿名性を意識していた可能性もある。しかし、いずれにしても多額の現金保有は今回のような詐欺被害に遭うリスクが高いこともたしかである。

 日本ではキャッシュレス化が進んでいないとされるが、こういった多額の現金保有もその遠因なのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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