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ウクライナで何が起きているのか、金融市場で新たなリスク要因に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 24日の米国株式市場でダウ平均は一時1000ドルを超す下げとなった。FRBによる金融政策の正常化観測とともに、ロシアとウクライナを巡る地政学リスクも意識された。

 24日に米国務省は、ロシアの軍事行動の脅威を理由に、在ウクライナ大使館の一部職員と家族の退避を承認したと報じられた。

 ウクライナを巡ってはロシア軍の動きが報じられているが、いったい何が起きているのか。

 ウクライナは元々ソビエト連邦に属していた国である。1991年のソビエト連邦の崩壊に伴い現在のウクライナ国家が成立した。ロシアと国境を接していることもあり、ロシアとは社会的、文化的につながりが深い。ロシア語も広い地域で使われているとか。

 しかし、ウクライナの国民はロシアから距離を取り、EUに接近することを望んだ。その結果として2014年、親ロシアの大統領を国民が追放したのである。ヤヌコーヴィチ大統領のロシアへの亡命を受け、ヤツェニューク首相による新政権が発足した。

 これに対しロシアはクリミア半島を併合した。ロシアにとってクリミア半島は黒海から地中海に出ることができる軍事的に重要な拠点であった。ウクライナ政府はこれをロシアの武力による違法占拠とし承認しない立場を発表した。

 ロシア政府は現在、西側の集団防衛機構、北大西洋条約機構(NATO)に対して、ウクライナの加盟を認めないよう要求している。これは裏を返せば、ウクライナがNATOに加盟したい意向を強めているということになる。

 ウクライナ東部における衝突は現在も続いている。これはドンバス内戦(戦争)と呼ばれている。

 去年11月ごろから、ウクライナ国境周辺では、ロシア軍が9万人以上とされる大規模な部隊を展開し、ウクライナのほか、北大西洋条約機構の加盟国は警戒を強めていた。

 現在、ウクライナ国境の周辺では、ロシアがおよそ10万人とされる軍の部隊を展開しており、緊張が続いている。米国のブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相による会談が、日本時間の21日夜7時すぎスイスのジュネーブで始まった。

 昨年12月3日にワシントン・ポスト(電子版)が、匿名の米国官僚の話として、ロシアが来年早々にも17万5000人の兵力から成る約100の大隊で、ウクライナ侵攻を計画していると報じていた。

 ロシアが本気でウクライナ侵攻を行うのかは現状は不透明ながらも、その懸念が強まっていることも確かなようである。

 ロシアがウクライナ侵攻を行えば、金融市場ではリスク回避の動きを強めることが予想される。ロシアは大規模な石油・天然ガスの埋蔵量を有しており、エネルギー価格の上昇要因ともなりうることにも注意が必要か。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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