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ここにきて日本国債を売っているのは誰だ?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 1月6日あたりから連休明けの11日に日本の債券市場は仕掛け的な売りによって大きく値を下げていた。

 特に仕掛け的な売りは債券先物に出ていた。6日の債券先物は引けにかけて売りが入り、債券先物の引けは30銭安の151円12銭の安値引け。現物債は5年、10年、20年などを主体に売られた。10年債利回りも0.115%と昨年4月6日以来の水準に上昇した。

 7日の30年国債の入札は順調な結果となっていたものの、こちらも引けにかけまとまった売りが入った。最終付き値からやや乖離して引け値が付き、6日に続いて15銭安の150円97銭と当日安値で引けた。5年、10年、20年も売られたが、40年債には買いが入った。10年債利回りは0.130%に上昇した。

 11日も後場に入り再び地合が悪化し、先物主導での下げとなり、一時150円71銭まで下落した。特に国内で何かしら円債の悪材料らしきものは見当たらないなかでの売りとなった。現物債はやはり5年、10年、20年主体の売りとなっていた。10年国債の利回りは昨年3月5日以来となる0.150%に上昇した。

 債券安の背景としては米債安があったことは確かである。7日から10日にかけて米10年債利回りは一時1.8%台に上昇していた。

 しかし、今回の円債への売りは仕掛け的な動きであったことも確かである。しかも売られた時間帯が後場というのも特徴的である。ここにきての債券先物のナイトセッションの出来高が1兆円を超すものとなっていたことにも注意したい。

 ナイトセッションや日本時間の午後に動きやすい投資家による債券先物の売り仕掛けであり、現物債も5年や10年、さらに20年あたりを含めて売りを仕掛けていたとみられる。つまりこれはヘッジファンドなど海外投資家のなかでも、やや足の早い投資家による仕掛け的な動きであると推測される。

 それではどうしてこのタイミングで日本国債の売りを仕掛けてきたのか。米債の下げに比べてやや出遅れていた面も意識されたのかもしれない。日銀は正常化には動けないとの見方から円債はやや売りづらい状況となっていたが、それでも世界的な物価上昇による金利上昇の動きは日本でも無視はできないとの思惑か。

 債券先物のチャートを睨んだテクニカルな動きであった可能性もある。債券先物の直近の安値は昨年2月26日につけた150円38銭であり、10年債利回りも26日に0.175%まで上昇しており、ここをトライにきた可能性もある。

 それともまた別の何かしら思惑的な動きであった可能性もあるか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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