「日本銀行では、2%の「物価安定の目標」の実現まで、緩和的な政策を粘り強く続けていく所存です」(12月1日の安達誠司日銀審議委員の講演より)。

 「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、3月の点検により持続性と機動性を増した「長短金利操作付き量的・質的緩和」のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続けていくこととしています」(12月2日の鈴木人司日銀審議委員の講演より)。

 二人の審議委員がほぼ同じタイミングでの講演だっただけに、日銀のサイトにアップされた講演内容を確認してみたところ、少し細かい点が気になった。

 日銀の審議委員とは普通の会社で言うところの役員である。日銀の役員としてはほかに総裁と副総裁、そして理事がいる。金融政策そのものを決めるのは総裁、副総裁と審議委員を加えた政策委員会である。

 つまり金融政策は政策委員会が決めたものである。このため、目標に対しての発言としては、本来であれば、安達委員のように「緩和的な政策を粘り強く続けていく所存です」との意気込みを示すのが普通かと思われる。

 ところが、鈴木委員は「強力な金融緩和を粘り強く続けていくこととしています」と第三者的な発言のようにもみえる。

 鈴木委員は金融政策そのものに責任を持っていないのか、と攻めたいわけではない。このニュアンスの違いが興味深かっただけである。

 安達委員は何が何でも「緩和的な政策を粘り強く続ける」としているのに対して、鈴木委員は現状は粘り強く続けていくこととしているが、と読めなくもない。つまり裏返すと、緩和的な政策を粘り強く続けていって良いものかどうか疑問を挟んでいるようにもみえるのである。

 この二人のニュアンスの違いについては、私は鈴木審議委員のほうが適切であるように思われる。むろん決めたことについては政策委員に責任はある。しかし、それがもし正しいものではないかもしれないのであれば、修正を促す必要もあろう。

 8年も緩和的、というより強力な緩和を続けて、いっこうに結果が出なかったのはどうしてか。目標そのものに誤りはなかったのか。副作用を置いてこのまま続けても良いものなのかどうか。

 欧米の中央銀行が正常化に向かうとなれば、物価目標を達成していないからという理由で日銀が強力な緩和を続けても良いのか。金融緩和や通貨安が経済に絶対的にプラスになるというものではないけれど、良い事例も存在しているように思われる。