イングランド銀行総裁の発言をきっかけに、世界的な金融政策の正常化観測が強まる(除く日銀)
イングランド銀行のベイリー総裁は10月17日、最近の物価高騰は一時的との見方は変わらないと説明しつつ、エネルギーの値上がりによって物価上昇局面がより長引き、予想物価を押し上げるリスクが高まっていると警鐘を鳴らした。その上で「金融政策は供給側の問題を解決できない。だが、特に中期的なインフレと中期的な予想物価に対するリスクをわれわれが目にすれば、政策対応をしなければならない」などと強調した(18日付けロイター)。
イングランド銀行は9月のMPCにおいて、政策金利を過去最低の水準となる0.1%で据え置くとともに、国債などを買い入れて市場に大量の資金を供給する量的緩和の規模を維持することを決めた。
この会合では、9人の委員のうち2人から量的緩和の規模を縮小するべきだという意見が出されていた。さらに年末時点のインフレ率が4%を超え、目標の2%を大きく上回る見通しで、金利上昇の根拠が「強まったもよう」という見解を示していた。
今回のベイリー総裁の発言を含め、イングランド銀行の一部当局者はこのところ、インフレ抑制に向けた利上げへの地ならしを行っている。
イングランド銀行のMPCは年内にあと2回開催されるが、今回のベイリー総裁の発言を受け、市場では11月と12月のMPCにおける利上げを完全に織り込んだ格好となった。
FRBは11月のFOMCでテーパリングを決定し、年内に開始すると見込まれている。さらに2022年中に利上げを開始する可能性が出ている。しかし、イングランド銀行がテーパリングと同時に利上げを年内に開始するとなれば、同じように予想以上の物価上昇を受けて、FRBが利上げを急ぐ可能性もありうるか。
ECBは実質的なテーパリングを開始したが、ラガルド総裁はこれはテーパリングではないと発言するなど、方向転換にはかなり慎重な姿勢を示している。しかし、物価の上昇が継続すれば利上げの準備を行ってくる可能性も出てこよう。
原油を含めたエネルギー価格の上昇が物価の上昇要因となるなど、一時的とされる物価の上昇が予想以上に長引く可能性が出てきている。エネルギー価格の上昇の背景には経済の正常化に向けた動きによる需要拡大もあり、今後も物価の上昇圧力が継続する可能性がある。
日本では企業物価指数が高水準ながら、日銀の物価目標となっている消費者物価指数は前年比でゼロ%近辺にある。しかし、原油価格の上昇は消費者物価指数に大きな影響を与える。ここにきて日本と欧米の長期金利差の拡大も意識されての円安ともなっており、消費者物価も上昇しやすい地合になりつつある。