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米卸売物価は2010年11月以降で最大の伸びに、世界的にも物価の上昇圧力は継続か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 米労働省が10日に発表した8月の卸売物価指数は前年同月比8.3%上昇となった。前年比の伸び率は比較可能な2010年11月以降で最大の伸びとなった。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数も6.7%の上昇となった。

 日銀が13日に発表した8月の国内企業物価指数は前年同月比で5.5%上昇となった。前月比で横ばいだったが高止まりの状態が続いている。

 米国では食品価格が2.9%値上がりし全体を押し上げた格好だが、国内企業物価指数では木材・木製品や鉄鋼の寄与度が高かった。

 米国の物価指数は今年4月あたりから前年比が大きく伸びており、これが一時的なものとなるのかどうかが注目されているが、少なくとも現状は高止まりが継続している。FRBは高止まりが1年程度継続する可能性も示していた。

 13日のNHKニュースでは、大手ガラスメーカーの間では原材料や燃料価格の高止まりなどを背景に、来月から建築向けのガラス製品を値上げする動きが相次いでいると報じていた。

 最大手のAGCは国内の住宅やビルなどに使われるガラス製品の販売価格について、一般的な板ガラスと鏡を15%から20%、防火用の網入りの板ガラスなどを30%、断熱性能の高い複層ガラスなどを10%から20%、それぞれ来月1日の納品分から値上げする(13日付NHK)。

 また、いわゆるウッドショックと呼ばれた木材価格の急激な上昇は緩和されたが、国内では輸入製材に頼る日本国内の家具製造や住宅建設などの業界にその影響がまだ残っており、それが日銀の企業物価指数にも現れているようだ。

 米国でも需要拡大の一方で、物流の乱れや人手不足といった供給制約が依然解消されず、強い価格上昇圧力が続いている(10日付日経新聞)。

 国内の消費者物価指数は低迷が続いているものの、国内の企業物価指数は上昇している。世界的にも物価の上昇圧力は続いている。

 それに対し、日本の消費者物価指数が前年比でマイナスとなっているのは違和感がある。これは日本はデフレ圧力が強いためとか、デフレマインドが払拭されないためとの説明がなされているが、本当にそうであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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