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何故、いまごろになって聖徳太子の偽1万円札が出てきたのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ideyuu1244/イメージマート)

 2024年度上半期に発行する予定の新しいデザインの1万円札の印刷が1日から始まった。都内の国立印刷局の工場で記念式典が行われ、出席した麻生副総理兼財務大臣などがボタンを押し、新紙幣の印刷が始まったそうである(2日付NHKニュース)

 印刷が始まったのは新しいデザインの1万円札で、肖像には「近代日本経済の父」と呼ばれ、明治から昭和にかけて産業界をリードした渋沢栄一が使われ、裏には東京駅の駅舎が描かれている。

 1万円札といえば先日、偽札が発見されてニュースになっていた。

 8月に都内のコンビニエンスストアなどで聖徳太子の肖像画が描かれた偽の旧1万円札がおよそ50枚使われていたことが分かり、警視庁は偽造通貨行使の疑いで捜査している(8月30日付NHKニュース)。

 この1万円札の偽札は、昭和30年代から発行されていた聖徳太子の肖像画が描かれたもので、すかしが入るなど精巧に作られていたが、アルファベットの「PS」で始まる実在しない記番号が印刷されていたとか。

 1885年に日銀が初めて銀行券(お札)を発行してから、現在までに53種類の銀行券を発行している。このうち現在、日本で使うことのできるお金は22種類ある。

 私は子供の頃に父親から「銭」という表示のお札を貰ったことがあった。これは現在では利用することはできない。日銀がこれまで発行した53種類のお札のうち、このように現在使うことのできないお札が31種類ある。

 この31種類とは、関東大震災後の焼失兌換券の整理にともなうものや、終戦直後のインフレ進行を阻止するため行われたいわゆる新円切替にともなってのもの、さらに私が貰った「銭」表示のような1円未満の小額通貨である。これらは3回にわたっての回収・廃棄が行われ、その結果この31種類のお札は現在、通用力を失っている。

 ただし、使えるお金の中には、明治18年発行開始の大黒像が描かれた1円札など現在ではたいへん貴重なものもある。財務省のサイトには、現在、発行されていないお金で、現在も使用できるもの一覧があった。

「昔のお金は使えますか」

 ここにもあるように、一万円券(聖徳太子:昭和33年発行)も利用できる。タンス預金なのか、ゴミ捨て場からよく見つかる1万円札には聖徳太子のものが多いように思われる。

 それではなぜ今頃、聖徳太子の偽札が出てきたのか。すかしが入るなど精巧に作られていたとはいえ、現在の1万円札のほうが当然ながら偽札防止技術が向上しており、偽札製造が難しいためともいえるのではなかろうか。

 いずれにしても、もし聖徳太子の1万円札を見つけた際には、記番号などを念の為確認しておいた方が良さそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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