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FRBのテーパリングは年内決定、利上げは2023年か、米長期金利は再び上昇基調に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

 FRBのクラリダ副議長は4日の講演で、米経済は回復期から拡大期に入ったと指摘し、米経済が金融当局の予想通りに推移した場合、当局は債券購入のテーパリングについて年内に発表し、2023年には利上げを開始するとの見通しを示した。

 4日の米国市場では、ADP全米雇用リポートで、非農業雇用者数が予想を大幅に下回ったことを受け、米10年債利回りは一時1.12%まで低下する場面もあった。しかし、7月ISM非製造業景況指数が過去最高を記録したことに加え、このクラリダ副議長の発言もあり、一時1.2%まで上昇するなど乱高下した。この動きを見ると、米10年債利回りはいったん1.12%でボトムアウトした可能性をうかがわせる。

 週間の米新規失業保険申請件数は2週連続で減少となったことなどから、5日の米10年債利回りは1.22%に上昇し、6日の米雇用統計で非農業雇用者数が予想を上回ったことなどから、この日の10年債利回りは1.3%台に上昇した。

 FRBのテーパリングと利上げによる正常化については、前回時を世襲してくる可能性が高いと個人的には思っている。

 米国経済によほどのことが生じない限り、8月末にワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムあたりでテーパリングを示唆、年内のFOMCでそれを正式に決定。来年1年かけてテーパリングを終了させる。その後、多少なり時を置いて2023年の遅い時期に利上げを決定するのではなかろうか。

 今回のFRBのクラリダ副議長の発言からもそういったスケジュール感がうかがえる。ここにきて米長期金利が低下し、1.2%を割り込んでいたことで、クラリダ副議長はこれに対して警告を発したとの見方もある。そのタイミングを狙ったのかは定かではないが、パウエル議長からの発言ではインパクトが大きいことで、露払いのような格好で今回の発言に繋がったのではないか。

 5日のイングランド銀行のMPCでは、金融政策の現状維持を決定したが、保有資産を緩やかに減らすという新たな指針を発表した。つまりテーパリングを行うことを示唆した格好となる。当然ながらFRBとイングランド銀行の間での意見交換も活発に行っているとみられ、為替の動きなど睨みながら、歩調を合わせてきたようにもみえる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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