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ウッドショック・木材バブルは後退か、木材先物価格は年初の水準割れに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引される材木先物の中心限月の年初来騰落率は6月12日の取引終了時点でマイナス0.6%となった(13日付ブルームバーグ)。

 つまり年初の水準を下回り、年初来からの大きな上げ分を消すこととなった。ウッドショックとも呼ばれた材木価格の動向を見る上で先物の推移は一つの指標となりえる。

 その材木先物の中心限月は2018年に600ドルを突破したが、それを除けば1990年代以降はおおむね200~400ドルのレンジで推移していた。

 ところが2021年に入り、1月には800ドル台を突破、3月から4月にかけて1000ドルも突破し、5月には1000ボードフィート当たり1733.50ドルと、1年前の4倍強の水準で取引されていたのである。

 この値動きはビットコインなど暗号資産のような値動きともなっていた。その後の動きも暗号資産のように急落となったのである。6月12日に材木先物(9月限)は712.90ドルで取引を終え、年初の水準を下回った。

 新型コロナウイルス禍に伴うテレワークの拡大や低金利政策を背景に、米国や中国で住宅着工が増えたことに加え、木材を運ぶ海運の需給逼迫で輸出入が難しくなったことに伴う世界的な木材価格の高騰と品薄はウッドショックと呼ばれた(7月11日付産経新聞)。

 木材価格の急騰を受けて、先物にはやや投機的な動きも出たとみられ、それが今年に入ってからの異常ともいえる価格上昇に繋がった。しかし、需給そのものもやや緩和され、それをきっかけに材木先物価格は急反落となった。

 ブルームバーグによると、パウエルFRB議長は先月、 経済再開に伴う供給のボトルネックが解消され、刺激策が縮小されるにつれて物価圧力が和らぐ証拠として、材木相場の値下がりに言及していたそうである。

 ただし注意すべきは、あくまで年初の水準に戻ったということで、それでも過去の推移に比べて水準そのものはまだ高い位置にあることも確かである。

 産経新聞は今春から顕著になっている国産木材の高騰を林業復活のチャンスにしようとする機運が、伐採、流通、製材の全セクションで高まっているとも伝えていたが、これについては少し様子をみたほうが良いかもしれない。

 材木先物の値動きを見る限り、暗号資産などのように投機的な資金が一時的に入り込んだ懸念もある。暗号資産とは異なって材木には実需がある限り、下値にも限度があることは確かである。しかし、さらに一段と価格が調整される可能性もないわけではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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