ECBの物価目標修正の意図
欧州中央銀行(ECB)は8日、2020年1月から実施してきた金融政策などの戦略検証の結果を公表した。物価目標を「2%未満でその近辺」から「2%」に変え、一時的な上振れを容認する姿勢を明確にした(8日付日本経済新聞)。
2%未満でその近辺のままであれば、ECBが2%超えを許さず、早めに金融緩和の手じまいに動くのではないかという臆測を招く恐れもある。
ラガルド総裁は記者会見で「新たな表現は曖昧さを取り除き、2%が上限ではないと断固として示すものだ」と強調したそうである。
FRBはインフレ率が一時的に2%を上回ることを容認し、長期的に平均2%の目標達成を目指すとしている。
日銀もオーバーシュート型コミットメントとして、物価目標の前年比上昇率2%を一時的に上回ってもすぐに金融緩和政策をやめるのではなく、同実績値が安定的に2%を超えるまで金融緩和策を継続するとしている。
今回のECBの決定は、FRBや日銀に歩調を合わせた格好となった(FRBのように平均とすることは否定)。しかし、何故このタイミングでの修正なのか。
足下物価そのものの上昇を受けてともいえそうである。5月のユーロ圏の消費者物価指数は前年比2.0%の上昇とECBの以前の物価目標は超えた格好となっていた。6月のユーロ圏の消費者物価指数は前年比1.9%となっていたが、今後再び2%を超えてくる可能性もあり、市場がそれによって金融緩和の縮小などを先取りして動くことのないように、物価目標そのものを調整してきたといえる。