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昨年度のGDPは過去最悪ながら税収は過去最高に。今後の国債発行に緩和効果も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 国の2020年度税収が60兆円強と過去最高となったことが新たに分かったと30日にロイターが伝えた。日経新聞によると60.8兆円程度となる見込みのようである。

 決算ベースでは2018年度の60.4兆円がこれまでの最高額で、2020年度はこれを2年ぶりに更新する。コロナが直撃した2019年度実績は58.4兆円だった。

 内閣府が3月に発表した2020年度のGDPは前年度比4.6%減となり、リーマン・ショック時の2008年度の下げ幅3.6%減を上回り、記録が残る1956年度以降で最悪となっていた。コロナ禍で個人消費が大きく落ち込んだのが要因とされた。

 政府はコロナ禍の影響拡大を受けて、2020年12月に国の2020年度税収が55.1兆円になるとの見通しを示していた。

 ところが税収は減少するどころか過去最高となるそうである。どうしてなのか。

 ひとつの要因として、2019年10月の消費税引き上げの効果がある。この効果が本格的に表れたことで税収を押し上げた。しかし、個人消費そのものは大きく落ち込んでいたはずである。

 それ以上に影響したものとして、法人税収が想定を超えて推移したことが大きいようだ。米国や中国など景気回復で先行する海外経済を背景に、企業業績はさほど落ち込まなかった。

 業績が落ち込まなかった企業に対して、飲食業や観光業、旅客運送業などコロナ禍によって大きく影響を受けたところとの格差も広がっていたとみられる。しかし、全体でみるとコロナ禍によって業績が落ち込むことはなく、法人税収が想定を超えていた。所得税も想定を上回ったようである。

 昨年度のGDPや日銀短観などの経済指標などからみて、ここまで税収がしっかりしていたとは思わなかった。

 リーマン・ショック後の2009年度の税収は38.7兆円まで落ち込み、リーマン・ショックの影響は税収にまで及んでいた。ところが、コロナ禍ではむしろ税収は増加するということになり、状況は大きく違っていた。

 昨年の3月に大きく落ち込んだ株価も急回復しており、この株式市場の動きは、ある程度企業業績も反映していたものであったといえそうである。

 2020年度税収が昨年末の12月の見通しの55.1兆円から実際には60.8兆円程度となれば、その差額分は今後の国債発行額などに対して緩和効果がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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