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ルービン元米財務長官がインフレのリスクを指摘

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ロバート・ルービン元米財務長官は28日、米インフレ率が高止まりする「大きなリスク」が存在するとの見方を示し、政策当局者に対し注意を払って過熱を回避するよう呼び掛けた(29日付ブルームバーグ)。

 懐かしい名前が出てきた。ルービン氏はラリー・サマーズ元財務長官が新型コロナウイルス禍に対応する巨額の経済対策の影響で最近の物価上昇が収まらない可能性があると警鐘を鳴らしたことを称賛したそうである。

 ルービン氏は財務長官としてはサマーズ氏の前任にあたる。そのサマーズ氏が、米政策当局者が悪性のインフレを招く危険を冒していると警告を発してきたが、ルービン氏もインフレが一過性の可能性はあるものの「持続する大きなリスクが存在する」と指摘した。

 未曾有のコロナ禍にあって、巨額の財政政策や異次元の金融緩和策などを行った結果、その出口に何が待ち受けているのか。これは予測が難しい。正常化によってコロナ禍以前とまったく同じ状態に戻るということはない。しかしその際に、物価がどうなるのかを現時点で予測するのは難しい。予想物価もあくまで現時点の予想であるに過ぎず、未来を見通しているわけでもない。それでもひとつのリスクシナリオとしてインフレが継続するという見方も出てくることは確かである。

 そのインフレに絡んでくるのはFRBとなるが、ルービン元財務長官はFRBの独立性をもたらした人物の一人ともされている。

 ルービン回顧録によると、1993年までは大統領と財務長官がFRBの政策について度々口を挟み、圧力をかけていたが、クリントン大統領は公の場でFRBの政策について発言をしないという原則を守ったとしている。これはルービン元財務長官が、大統領や政権幹部に対し、金融政策を公の場で批判しないほうがよいとアドバイスしたことによるとされている。

 また、真の中央銀行の独立性は、われわれの経済にとって明らかに最適なレジームだと私は考えているとルービン氏は語っていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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