FRBのパウエル議長は22日のコロナウイルス危機に関する下院特別小委員会での証言用原稿の中で、経済が新型コロナウイルスによる影響から「持続的に改善」し、労働市場の伸びも継続しているほか、インフレ率は「ここ数カ月で顕著に上昇している」という認識を示した。現行の金融政策や焦点のテーパリングについては詳しく触れなかった(22日付ロイター)。

 この日は、セントルイス地区連銀のブラード総裁とダラス地区連銀のカプラン総裁が、テーパリングを早めに進めれば、利上げを巡って一段と柔軟な対応が可能になるという考えを表明した。

 そして、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、米経済が新型コロナウイルス感染拡大で引き起こされた危機から急速に回復しているとしながらも、FRBが現行の景気支援策の一部を引き揚げるには一段の進展が必要との認識を示した。さらに現在のような高水準の物価上昇率は続かないと述べていた。

 FRBはいったいテーパリングを進めたいのか、進めたくないのか。利上げはどうみているのか。利上げをしたいのか、したくないのか。コメントする人によって異なる意見が出ているが、誰の意見を参考にすれば良いのか。

 このあたりが実は市場との対話となるのである。それぞれ異なる意見のようにみえるが、市場に向けて情報発信を行うことで、市場参加者に考えさせようとしているのである。このため、バランスを取る必要もあり、利上げに前向きな姿勢を示す者が出れば、それを引き戻す者も出る。

 ただし、18日のセントルイス連銀のブラード総裁の発言に、市場はやや過剰反応してしまったのである。

 セントルイス連銀のブラード総裁は「インフレ加速でFRBは2022年にも最初の利上げをするだろう」との考えを示した。ドットチャートの見通しよりも前倒しでの利上げの可能性を指摘した格好となった。ブラード総裁はハト派とされていたので、意外感も手伝ったようである。

 この日にはミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は18日、労働市場が新型コロナウイルス禍前の力強さを取り戻せるよう、少なくとも2023年末まではゼロ金利を維持することが望ましいという考えを示したが、この発言に市場はほとんど見向きもしなかった。

 これは市場で、テーパリングと利上げのイメージが形成されつつあったためともいえるのではなかろうか。ただし、それもやはり過剰反応であった。まだ、テーパリングについてもFOMCでは本格議論は始まっていない。

 FOMC参加者たちがみずからの意見というかたちで発言することで、市場のコンセンサスを形成させることも重要である。ただし、ここで注意すべきはトップの発言である。つまりパウエル議長が何かしら示唆をしてしまうと、市場はそちらの方向に向けて動き出してしまうのである。だからこそバウエル議長は慎重な発言となっており、テーパリングの示唆のタイミングを計っているともいえるのではなかろうか。