16日のFOMC後の会見でパウエル議長は、国債などを買い入れる量的緩和の縮小(テーパリング)の開始に関して、経済データを確認したうえで具体的な議論に入る考えを示した。そして、決定前に「市場と対話を重ねる」方針を訴えた。

 テーパリングについては、その検討をはじめることを検討といったかなり遠回しの表現となった。本格的なテーパリングの示唆は8月末のジャクソンホールでの会議で行われる可能性が高いというのがいまのところ市場参加者のコンセンサスではなかろうか。

 16日のFOMCで注目されたのは、テーパリングに関する発言よりも、ドットチャートであった。FOMCの参加者の先行きの見通しを示すドットチャートでは、参加者18人のうち13人が2023年内の利上げを予想し、2023年予想の政策金利の中央値は0.625%と年に2回(計0.5%)の利上げの見通しが示されていたのである。

 前回の見通しに比べて、利上げ時期が前倒しされたとの見方から、これを受けて16日の米債は売られ、10年債利回りは1.57%と前日の1.49%から大きく上昇した。ところが、17日の米債は中期ゾーンは利上げ観測で売られたものの、長期・超長期ゾーンはFRBの利上げによってインフレが抑制されるとの見方で買われたのである。17日の10年債利回りは1.50%に大きく低下した。

 この流れは18日も続き、やはり中短期債は売られたが、長い期間の米国債は買われ、米10年債利回りは1.44%に低下した。これにはセントルイス連銀のブラード総裁の発言が影響した。米CNBCに出演したブラード総裁は「インフレ加速でFRBは2022年にも最初の利上げをするだろう」との考えを示した。ドットチャートの見通しよりも前倒しでの利上げの可能性を指摘したのである。ブラード総裁はハト派とされ、意外感も手伝った模様。これを受けて米国の長短金利差がさらに縮小し、イールドカーブはフラット化圧力を強めた。

 ここにあらたな発言が飛び出した。ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は18日、労働市場が新型コロナウイルス禍前の力強さを取り戻せるよう、少なくとも2023年末まではゼロ金利を維持することが望ましいという考えを示したのである。

 マーケットがやや利上げに向けて傾斜姿勢を強めたことから、FRBはいったんブレーキを掛けたともいえる。それが目的のカシュカリ総裁の発言であったように思われる。今後、このような調整というか、パウエル議長のいうところの「市場と対話を重ねる」機会は多くなろう。

 いずれにしても再び大きなショックが起きない限り、FRBは正常化に向けて動くという姿勢を示してきたことは確かであろう。

 前回の正常化のプロセスを踏まえれば、年内にテーパリングを決定し、年末もしくは来年初めからテーパリングを開始、1年程度の期間を設けてテーパリングを終了させ、2023年に利上げを行うというシナリオがみえてくる。物価などの動向次第ではこのスケジュールが前倒しされる可能性もみておく必要があると思っている。

 18日の米国株式市場では、ダウ平均は続落し533ドル安となっていた。週間では今年最大の下げ幅となった。ここにきて銀先物や銅先物、プラチナ先物など金属相場も軒並み下落していたが、リフレトレードの手じまいとの見方もあった。少なくともバブル相場と呼ばれるほどやや過熱した市場は、FRBの緩和修正がはっきりするにつれて、調整を迎える可能性が出てきたことは確かである。

 ただし、FRBは景気への配慮も必要となり、あくまで非常時対応からの正常化が可能となってきたことを示すことで、やや過熱気味の相場を少し冷やし、物価についてもオーバーシュートすることのないよう目を配る姿勢を示すとみられる。

 それでもテーパリングが実際に検討され、それが実施されるとなれば、少なくとも過剰流動性相場への期待感は後退しよう。買うから上がる、上がるから買うといったマネーゲームとなっていたものが、大きく価格修正するひとつのきっかけとなる可能性は当然ありうる。

 米国債については、今回のフラット化はやや行き過ぎのようにもみえる。利上げ観測が強まると、短い期間の利回りに上昇圧力が掛かるのは常である。しかし、今後は国債の買い入れを縮小する反面、大型の財政政策は継続される。米国の債務残高は膨れ上がっており、米長期金利の低下にも限界はあるとみている。