16日のFOMCで注目されていたのはテーパリングについて、何かしらの示唆があるかどうかであったと思う。

 16日のFOMC後の会見でパウエル議長は、国債などを買い入れる量的緩和の縮小開始に関し、会合で経済情勢の進捗を議論したと説明。「今後の会合の中で(目標に向けた)進展が続くと参加者は期待している」とし、さらに経済データを確認したうえで具体的な議論に入る考えを示した。決定前に市場と対話を重ねる方針を訴えた(17日付日経新聞電子版)。

 テーパリングについては、その検討をはじめることを検討といったかなり遠回しの表現となった。本格的なテーパリングの示唆は8月末のジャクソンホールで開かれる会議で行われる可能性が高いというのが市場参加者のコンセンサスではなかろうか。

 16日のFOMCで注目されたのは、テーパリングに関する発言よりも、ドットチャートであった。

 ドットチャートでは、参加者18人のうち13人が2023年内の利上げを予想し、2023年予想の政策金利の中央値は0.625%と年に2回(計0.5%)の利上げの見通しが示されていた。

 前回の見通しに比べて、利上げ時期が前倒しされたとの見方から、これを受けて16日の米債は売られ、10年債利回りは1.57%と前日の1.49%から大きく上昇した。

 米10年債利回りは5月19日に一時1.7%近くまで上昇したあとは低下基調となっていた。6月4日に発表された5月の米雇用統計では非農業雇用者数が前月比55.9万人増と市場予想を下回った。これを受けて、FRBが早期に金融引き締めに着手するとの観測が後退したようで、4日の米10年債利回りは1.55%に低下した。

 さらに6月10日に発表された5月の米消費者物価指数は、前年同月比5.0%の上昇となり、2008年8月以来、約13年ぶりの大幅な伸びとなった。米10年債利回りは一時1.53%に上昇したものの、買い戻され、10年債利回りは1.43%に低下していた。

 このあたりからややおかしな動きにもみえた。チャートを意識した動きともみえたが、ショートカバーを誘い込むような仕掛け的な買いが入っていたかのような動きであった。

 6月以降の物価動向をみたいとの意向もあったのかもしれないが、米国経済は正常化に向かいつつあり、物価も少なくとも1年程度はFRBの目標というか目安というか想定を上回る水準が続くことが予想される。

 16日にFRBが示した見通しでも、景気見通しを3月から0.5ポイント上方修正し、2021年10~12月の実質GDPが前年同期比7.0%増えると予測していた。2022年は3.3%を見込んでいる。物価上昇率は2021年10~12月期に前年同期比3.4%に達し、目標の2%を大きく上回るとみている。ただ2022年以降は2%強に落ち着くとみている。

 こういった予測であれば、当然ながら非常時対応の金融緩和策を修正し正常化を目指す動きが予想されよう。むろん2013年5月のバーナンキショックの再来は防ぎたいともみられ、どのように正常化を市場に浸透させるかが、パウエル議長にとっての課題ともなる。

 いずれにしても前回の正常化のプロセスを踏まえれば、年内にテーパリングを決定し、年末もしくは来年初めからテーパリングを開始。1年程度の期間を設けてテーパリングを終了させ、2023年に利上げを行うというシナリオがみえてくる。物価などの動向次第ではこのスケジュールが前倒しされる可能性もみておく必要があると思っている。

 16日の米債は大きく売られ、10年債利回りは1.57%に上昇した。ここにきての米10年債利回りの低下が一時的なものであり、今後は再び上昇基調に戻るとみている。しかし、果たしてそう素直に動くかどうか。17日の米国債券市場では中期債は売られたが、長い期間の国債は買われ、米10年債利回りは1.50%に低下していた。日本の投資家動向なども注意する必要はあるかもしれない。