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銀行がビットコインを保有するならば、同等の金額以上を自己資本に積めとの厳しい規制を検討

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 金融機関の国際ルールを協議するバーゼル銀行監督委員会は10日、銀行によるビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の保有を規制する案を公表した。銀行がビットコインなどの仮想通貨を保有する場合に、それにかかわるリスクウエートと呼ばれる数値を1250%という極めて高い水準に設定することを提案した。

 国際統一基準ではバーゼル合意に基づき、銀行が達成すべき自己資本比率を8%以上と定めている。この8%の最低所要自己資本比率に基づくと、リスクウエートが1250%ということは、銀行は保有するビットコインに相当する以上の金額の自己資本を保有しなければならないことになる。

 バーゼル委員会は暗号資産がマネーロンダリング(資金洗浄)に利用される可能性や銀行の評判に及ぼし得る影響、価格乱高下がデフォルトにつながるリスクなどを指摘し、極めて厳しい評価を下した。

 この報道を受けて、ビットコインは一時大きく「上昇」した。ビットコインが銀行が保有できる資産と認定されたとの解釈であったようである。しかし、これはむしろ銀行がビットコインなどを保有するのであれば、同等の金額の自己資本を保有、つまり全額ゼロになっても耐えられるようにしなければならないとしたことになる。ビットコインなどへの無理な投資は避けるべきと暗に示した格好となる。

 同じ仮想通貨であっても、法定通貨などを価値の裏付けとして発行するステーブルコインには新しいルールは適用されないそうであるが、ステーブルコインについても本当に資産の裏付けがあるのかという疑問も残ろう。

 バーゼル委員会は報告書で「暗号資産と関連サービスの拡大は金融安定への懸念と、銀行が直面するリスクの増大を引き起こす可能性がある」と指摘した(10日付ブルームバーグ)。

 ビットコインなど暗号資産への注目度も高く、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にすることを決めるなどの動きも出ている。バーゼル委員会はこれに対して、もし銀行がビットコインなどを保有するのであれば、厳しい条件を付けることで、銀行を保護しようとしているものと思われる。今回のバーゼル銀行監督委員会は提案は意見公募を経て発効するそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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