コロナ後の金融緩和の出口議論を早く始めるべきとの意見
須田美矢子・元日銀審議委員(キヤノングローバル戦略研究所・特別顧問)は、ロイターとのインタビューで、日銀が買い入れたETF(上場投資信託)をバランスシートに残しておくことは財務面でリスクがあると指摘、ETFを含む金融緩和政策の出口戦略の議論を早く始めるべきだと指摘した。
須田氏は1998年に施行された新日銀法に向けた日銀法改正の議論に携わり、2001年から11年まで2期10年間、日銀の審議委員を務めた。この間、ETFやJ-REIT(不動産投資信託)など多様な資産買い入れを盛り込んだ2010年の包括緩和の決定にもかかわっていた。
いったん中央銀行がリスク資産に手を出すとどうなるのか。経済主体の行動を変えることが狙いと言うが、市場参加者はそんなことよりも、次第に日銀の依存してしまうことになる。
須田氏は、現在のETF買い入れの性質は株価に直接影響を与えようとするものであり、「市場の機能を力づくで変えようというのは絶対やってはいけないこと」と戒めたそうだが、そうなることは当時、予想できなかったのか。
それ以前に、ETFやJ-REITの買入にあたって将来の出口政策をどうして議論していなかったのかも問題となろう。市場での買い付けが大きなインパクトを与えるとなれば、売りはそれ以上のインパクトを与えかねない。
黒田総裁は金融緩和の出口戦略について「2%物価安定の目標達成が目に見えてきた段階で議論する」と述べているが、須田氏は「それでは遅すぎる」と指摘した。
須田氏は「日銀は政策がうまくいかなかったことを外部要因のせいにしているが、波及チャネルに何か問題がなかったのか。これだけ長期間緩和政策をやってきて、なぜ主張しているメカニズムが働かなかったのかをきちんと評価してほしい」とも述べた。
この点も重要である。波及チャネルに何かしら問題があったのか、それとも金融市場を通じたオペレーションでは物価誘導そのものに限界があったということではなかったろうか。このあたりの検証は必要である。
2%の物価目標ばかり追いかけても、逃げ水を追いかけるような格好となり、超緩和策の副作用が膨らみ続けることにもなりかねない。
須田氏は、日銀が何らかの出口論を発信することで、政治家や市場参加者を巻き込む形でオープンな議論ができるようになると語った。物価目標達成の有無にかかわらず、出口論は封印するのではなく、表だって議論を進めることをしなければ、底なし沼に陥りかねない現在の状況を打破することはできないのではなかろうか。