物価上昇観測が強まる。欧米の期待インフレ率が上昇、金属価格の上昇やウッドショックも影響か

(写真:アフロ)

 米国の期待インフレ率を示す5年物ブレークイーブン・レートは、10日に一時2.7327%と、2008年のピークを上回って2006年以来の高水準を付けた。

 また、10日のユーロ圏の期待インフレ率の目安となる5年先5年物インフレスワップも、1.56%を上回り、ほぼ4週間ぶりの水準に上昇していた。

 10日は米国の主要パイプラインがサイバー攻撃を受けて操業停止となり、石油製品価格が上昇したことが影響した。しかし、コロニアル・パイプラインについては今週末に大半が復旧する見通しとなり、一時買われていた原油先物は上げ幅を縮小させた。

 しかし、物価そのものは今後さらに上昇してくる可能性が高く、今回の欧米での期待インフレ率の上昇というか、物価そのものの上昇も一過性のものとは言い切れない。

 10日の中国市場で鉄鉱石と鉄の先物価格が過去最高値を付け、銅も需要が改善するとの見方から過去最高値を付けた(11日付ロイター)。

 そして、ここにきて「ウッドショック」という言葉が広がりはじめている。日本でも住宅の柱や梁(はり)などに使う輸入木材の需給が逼迫して価格が高騰している。

 米国でも品不足が原因で木材価格が高騰している。超低金利に新型コロナウイルス禍での在宅勤務普及が重なり米国で住宅ブームが発生。木材需要が予想外に膨れ上がり、価格は約1年で6倍に高騰した。米国では資材高で新築住宅の価格や家賃が上昇し始めており、日本にも輸入木材の価格高騰や調達困難の形で「ショック」が波及している(10日付日経新聞)。

 日本を含め、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大は止まらない。しかし、ワクチン接種が進んでいる米英や、感染拡大を抑え込んだ中国などでは、経済の正常化の動きを強めている。

 中央銀行の非常時対応の金融緩和策と政府の大規模な財政政策に加え、コロナ禍で景気が大きく落ち込んだ反動による景気の回復期待もあり、物価は上昇圧力を強めつつある。

 米長期金利はいったん1.7%台でピークアウトした。これはインドなどでの急速な新型コロナウイルスの感染拡大などを受けたものとみられる。しかし、物価の上昇圧力は引き続き強く、これが今回の欧米の期待インフレ率にも現れたともいえよう。このため、今後はさらに欧米の長期金利に再び上昇圧力が強まることが予想される。

 ちなみに、本日発表される米国の消費者物価指数は前年比3%超えとの予想となっている。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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