中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入したとの情報で欧米の株式市場が一時急落?、報道前に市場が動いたとも

(写真:ロイター/アフロ)

 4日の欧米の株式市場と債券市場、さらに外為市場はやや不可解な動きとなっていた。この日の最大の注目材料は、米国のイエレン財務長官の発言であった。

 イエレン長官は3日収録されたアトランティック誌とのインタビューで、「米経済が過熱しないよう確実を期するには、金利はやや上昇せざるを得ないかもしれない」と発言。「金利の極めて小幅な上昇につながる可能性がある」と付け加えた。インタビューは4日にウェブサイトで公開された(5日付ブルームバーグ)。

 政府関係者がFRBの管轄でもある金利に言及することはまれである。イエレン長官は前FRB議長であったことから、FRBの独立性を当然理解しているはずである。今回、イエレン長官の指摘した金利はFRBの政策金利のことではなく、市場で形成される長期金利であったとみられる。

 イエレン財務長官とのインタビューでは、政府の財政支出の拡大に伴い、米経済が過熱しないように確実を期するため、金利はほんの少し上昇せざるを得ないかもしれない、と述べたとも伝わった。これはまさに米国債の利回り、つまり米長期金利のことであろう。

 これを受けて今後の長期金利の先高感が強まって、米国株式市場ではハイテク株が売られ、外為市場ではドルが買われたとされた。しかし、肝心の米長期金利、つまり10年国債の利回りはむしろ低下していた。欧州の国債利回りも総じて低下していたのである。どうしてなのか、何かしらリスク回避を誘う動きでもあったのか。

 この日の原油先物価格は大きく上昇しており、こちらもインフレを連想させるものとなったはずである。

 米国株式市場での特にナスダック指数の下落により、リスク回避からの米長期金利の低下との見方もあったが、そもそも米長期金利の上昇観測によるハイテク株の割高感の修正売り(ナスダック指数の下落)との見方もあったことで、やや矛盾することになる。

 どうやらこの不可解の動きにはもうひとつの要因が絡んでいたようである。

 欧米の株式市場の4日の取引で、株価が商いを伴って数分間で約0.5%下落する事象が発生したと、こちらはロイターが報じた。

 株価が急落したのは日本時間午後8時30分前後。米市場では4分間でナスダック先物が0.5%、S&P500eミニ先物が0.4%下落した。 その後、それぞれ2%と1%まで下げ幅を拡大した。欧州市場ではストックス欧州600種が急速に下落。その後は1.1%安となっている(5日付ロイター)。

 小規模ながらも、いわゆるフラッシュ・クラッシュが起きていた。フラッシュクラッシュとは短い期間内に発生する急速で、不安定な市場価格の下落のことを示す。

 何故、フラッシュ・クラッシュが起きたのか。その理由のひとつとして中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入したとの情報が売りを触発したの見方が出ていた。

 ロイターによると、一部トレーダーは、台湾国防部(国防省)から中国軍の戦闘機が台湾の防空識別圏に侵入したとの声明が発表されたことで、急激な売りが触発されたと指摘。ただS&P先物の急落は声明発表の約20分前に始まっており、中国軍機による侵入はこれまでも発生していることから、その後、否定されたとか。

 しかし、ほかに材料らしきものが見当たらないことに加え、そのタイミングから、中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入したとの情報がフラッシュ・クラッシュの原因であった可能性はありうる。

 たしかにタイミングという意味では、ニュースが報じられる前に動くのはおかしいとの見方は当然ある。しかし、市場価格の動きを長らくみていると、市場が反応するであろう記事が報じられる前に市場価格が動き出すといったに事例は結構ある。それがインサイダー情報によるものなのか、公式発表前に何かしらの手段でその情報を掴んだトレーダーがいたのかとかはわからない。しかし、何か動きがおかしい、どうしたんだと思った矢先にこのようなニュースが飛び込むことは実はそれほど異例ではない。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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