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欧州での新型コロナウイルス感染のリバウンドのリスクが高まり、金融市場は動揺

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 百年前のスペイン風邪を調べていた際に、いったいいつからいつまでで第何波まであったのかが、バラバラとなっていたのに戸惑った記憶がある。今回の新型コロナウイルスについても、日本では第三波が11月に来たとされているが、欧州では3月に入り第三波が懸念されている。

 パリ首都圏で3月20日の午前0時から、新型コロナウイルス対策のロックダウンが再開された。フランスでは18日の24時間の新規感染者が3万5000人を超え、流行の第三波が懸念されていると報じられた。今回のロックダウンの期間は1か月の予定。他にも国内15の地域で同様の措置が取られる。

 英国のジョンソン首相は22日に、欧州で広がりを見せている新型コロナウイルスの感染第三波が英国に飛び火する恐れがあるとして、注意を促した(23日付ロイター)。

 さらにドイツではロックダウンを延長し、4月の復活祭には一段と厳格化すると発表した。

 23日の欧米市場では、欧州で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、世界経済の正常化が遅れるとの懸念が強まったことから、株式市場は下落し、リスク回避の動きから国債は買われた。また、原油先物は大幅に下落した。

 日本ではこのタイミングで緊急事態宣言が解除された。政府は21日をもって、新型コロナウイルスの緊急事態宣言を2か月半で全面解除した。東京、神奈川、埼玉、千葉の4都県で継続していた宣言が終わった。ただし、新規感染者は増加傾向となっており、感染再拡大(リバウンド)の懸念がある。

 「リバウンド」という用語が頻繁にみられるようになったが、それだけ日本においても再拡大が懸念されていることも確かではなかろうか。

 前回の2020年4月7日から5月25日にかけて実施された緊急事態宣言では、GDPの下押し圧力が大きく掛かった。今回はそれほど大きいものではなさそうだが、それでも個人消費などを中心に影響が出たことも確かではなかろうか。

 今後は新型コロナウイルスのワクチンの普及が進めば、感染拡大にブレーキが掛かることが予想される。しかし、それがどの時期に来るのかは見通せない。東京オリンピック・パラリンピックについても慎重にならざるを得なくなろう。

 日銀の金融緩和策も政府の財政政策も、感染拡大にブレーキが掛かるまでは、アクセルを踏み込まざるを得ないことは確かである。それでも出口は意識しておく必要はある。

 金融資産バブルが膨れ上がってきていることも確かである。足下の実体経済が低迷していれば、なおさら株式市場などとの乖離は大きくなる。政府債務の膨張に対しての長期金利の無反応度も本来気にしなければいけないとも思う。しかし、現在はリバウンドを封じ込めることが最優先となることも確かであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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