パウエル議長の発言を受け米長期金利は上昇、米株は下落、ドル円は108円台。雨宮日銀副総裁の講演も注目
長期金利が大きく動き出してきたことで、中央銀行からの情報発信が増えつつあり、市場参加者も注目している。
米国のリッチモンド地区連銀のトーマス・バーキン総裁は、今年は新型コロナウイルス流行からの米経済の回復が続くことを引き続き楽観しており、米国債利回りの上昇はさほど懸念していないとの考えを示した。
これに対し、FRBのブレイナード理事は、経済成長や消費の見通しは改善し始めているものの、大規模債券購入のペース減速に向けて米金融当局が示した条件を満たすには、「しばらく」時間がかかるとの見解を示した。また、最近の債券市場の不安定な動きによって、さらにずれ込む可能性があると指摘した。要は長期金利の上昇を牽制したような格好となった。
ECのチーフエコノミストのレーン理事はユーロ圏の金融環境を注視しており、不適切なタイト化を防ぐために柔軟に債券購入を行うと述べた。
ECB政策委員会メンバーでフランス銀行(中銀)のビルロワドガロー総裁は、正当な理由のない債券利回りの上昇には対応しなければならないと語った。
そして、バイトマンドイツ連銀総裁からは「債券利回りの上昇は非常に注意深く分析されなければならない」としながらも、「利回りの上昇幅は特に気になるものではない」との発言があった。
4日には本命といえるFRBのパウエル議長のWSJ紙の「公開インタビュー」があった。ここにきての長期金利の上昇を抑制するような発言が出ると予想された。実際に「債券市場の混乱が続けば、景気回復に向けたFRBの目標達成が危ぶまれる」と述べ、長期金利の動きに懸念を示した。
ただし、市場ではツイストオペの観測も出るなど超金利を抑制する行動を取るのではとの期待も一部にあったようである。さすがに米長期金利の1%台でそのようなことをするのは考えづらいし、長い期間の国債の買い入れを増やすとそれは財政ファイナンスに写りかねない。ツイストオペなどはある意味、非常手段である。
ただし、国債を取り巻く状況がかなり神経質となっているため、ここで長期金利上昇を容認するような発言をすると火に油を注ぐことになりかねない。容認とまでしいかなくても、今回のパウエル議長の発言は「期待していたほど強い警戒感を示さなかった」と受け止められ、4日の米長期金利は1.56%に上昇し、これが嫌気されて米国株式市場も下落した。5日の東京時間では米長期金利の上昇を受け、外為市場でドル円は8か月ぶりの108円台乗せとなった。
そして、日銀の雨宮副総裁が8日にオンライン講演会で「ウィズコロナ、ポストコロナの金融政策」と題する講演を行うそうである。読売新聞社主催ながら、事前の申し込みは不要で、どなたでも視聴できるという極めて異例ともいえる講演となる。このタイミングでの日銀の雨宮副総裁の講演はたいへん興味深い。
日銀に対しては18、19日の金融政策決定会合における点検で、長期金利のレンジが拡大されるのではとの観測もあり、これも日本の長期金利の上昇要因ともなっている。日銀のキーパーソンである雨宮副総裁が、点検に向けて何かしらの示唆や説明を行ったりする可能性もある。ここにきての長期金利の動きに対し牽制を行ってくる可能性もあるかもしれない。日銀には指し値オペなどの手段もあり、どの水準かはさておき、急激な10年国債の利回り上昇には対応するなどの発言が出る可能性もある。いずれにしても8日の日銀の雨宮副総裁の講演も要注目となりそうである。