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日銀の株(出資証券)がストップ高となった背景、これもバブルを示すものか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:cap10hk/イメージマート)

 日本銀行は株式会社ではないものの出資証券を発行している。日銀の資本金は1億円となっており、その55%が政府から、45%が民間からの出資(日本銀行法第8条)となっている。現在の日銀は、いわば半官半民の存在(認可法人)となっている。だから日銀は政府の一部機関であり、政府債務と日銀保有の国債は相殺できるという見方はおかしい。

 今回はそれはさておいて、東京証券取引所に上場する日銀の出資証券の価格が3月1日にストップ高となる3万3000円になったことが話題となっていた。2日も上昇し、2018年10月以来の高値である4万円を付けた。

 日銀の黒田総裁は1月27日の参院予算委員会で、現在の株価水準から試算した保有ETF(上場投資信託)の含み益が12兆~13兆円であることを明らかにしていた。今年度上期には株価上昇によるこのETF運用益の増加から、最終利益にあたる当期剰余金が9288億円と過去最高水準を記録するなど空前の好決算となっていた。

 好業績が好感されて株価が上昇したとの見方もできなくはないが、日銀の業務目的は利益をあげることではない。日銀券の価値を安定させることが日銀の主たる業務の目的となっている。そのためにどうしてETFを大量に買わなければならないのかという議論もさておき、注意すべきは日銀株(出資証券)にも投機的な資金が流入しているとの点であろう。

 日銀の株(出資証券)が大きく上昇したのは今回が初めてではない。日銀株は1984年の8月に付けた上場来安値18000円から1988年12月の上場来高値75万5000円まで約41倍に上昇していた。

 いうまでもなく1985年のプラザ合意などを起点に発生していたいわゆるバブルによって日銀の株価も吹き上げられていたのである。ただし、それは崩壊前の1989年末までは続かず、その1年前に終了していた。

 今回も同様に個人などの資金が日銀の出資証券に向かうなど、マネーゲームの様相ともいえよう。これが何を意味するのかは言うまでもないと思う。ちなみにスイスの中央銀行のスイス国立銀行の株も スイス証券取引所で大きく上昇していたそうである。これも個人投資家を中心とした株式市場の熱狂を反映しているともいえよう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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