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長期金利の上昇でFRBや日銀はどう動くのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米10年債利回り(米長期金利)は節目とされた1.6%を上回った。つまりここを突破するということは米長期金利もコロナ禍以前の水準に戻るということにもなる。

 米国株式市場は主要三指数が一時、過去最高値を更新していたが、米国株式市場の上昇の背景にあったのは非常時対応の中央銀行の金融緩和策と政府の財政政策によるものである。大型の経済対策による景気回復期待もあった。

 新型コロナウイルスのワクチン接種の開始によって感染拡大にブレーキが掛かる可能性が出てきており、経済の正常化が現実味を帯びてきた。これも米長期金利がコロナ禍以前に戻る理由ともなろう。

 米長期金利の上昇には物価上昇期待も背景にある。原油先物は上昇基調となってきており、現状、WTI先物は60ドル台だが、チャート上からは80ドルや100ドルあたりに上昇してもおかしくない。ただし、いくら中国や米国などを中心に原油需要が回復しつつあるといっても、WTI先物を80ドルあたりにまで引き上げる要因にはなりづらい。いわゆる投機資金が入ることで、一時的に引き上げられる可能性があるとみている。

 日本や米国は原油価格の上昇は物価に直接影響を与えることもあり、景気の回復も加わり、FRBの物価目標が達成される可能性が出てきている。ただし、FRBは物価目標を超えてもそう簡単に利下げはしないと宣言してしまった以上、利上げは遅れる可能性がある。しかし、その前にテーパリングを行ってくる可能性はありうる。

 FRBとしては米長期金利がコロナ禍以前の水準にまで戻ることは許容範囲ではなかろうか。そうなると米長期金利が2%を超えたとしてもおかしくはない。

 日銀による3月の点検の意図としては現在の超緩和策を継続させるためのものであったかもしれない。しかし、今後の世界経済や物価の動向、米長期金利の動向などによっては、点検そのものの意味合いに変化が出てくる可能性もある。つまりそれは経済の正常化にも備えるものというようなものになったとしてもおかしくはない。長期金利のレンジ拡大も選択肢に入っているとされているが、現実に日本の10年債利回りが0.2%を上回ってくる可能性もありうるか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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