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ビットコインは消えるのか、民間のデジタル通貨の行方は

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 29日付けのブルームバーグによると、暗号資産(仮想通貨)ビットコインの投資家は「全ての資金を失う」覚悟が必要だと、欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのマクルーフ・アイルランド中銀総裁が述べたそうである。

 同総裁は29日ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「個人的には、なぜ人々があのような資産に投資するのか分からないが、彼らは明らかにそれを資産と見なしている」とした上で、「われわれの役割は、消費者を確実に保護することだ」と語った。

 ビットコインはすでに通貨としては使えないことは明らかとなってきた。価格があれだけ乱高下するものは通貨としては使えない。それとともに、マネーロンダリングなどに使われるリスクや外部流出リスクなども伴うことで、現在ではあくまで投機対象商品という位置づけで良いかと思う。

 マクルーフ総裁が指摘するように無価値となることについてはわからない。例えは悪いかもしれないが、ビットコインはゲームにおけるレアアイテムの売買のようなものであり、ゲームの参加者がいる限りは無価値になることは現状考えづらい。

 そのゲームに大物が参加したのではとの思惑が強まり、ビットコインが一時上げを広げ、一時3万8000ドルを上回った。電気自動車メーカー、テスラの創業者イーロン・マスク氏のツイッターページに、#bitcoinの記載があって、超大物で世界有数の資産家がビットコインに参入かとの思惑が拡がったようである。

 しかし、これに対して、あのロビンフッド・マーケッツが29日、価格が急上昇したビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)で取引を制限したとも報じられた。SNS(交流サイト)では一部の株式と同様、仮想通貨の購入を呼びかけるやり取りが交わされ、価格の急上昇につながった投機的な動きに対し、ゲームストップの時と同様にブレーキを掛けようとしたとみられる。

 ロビンフッダーと呼ばれる個人投資家がチャットルーム「WallStreetBets」などを介して、仕手戦のようなものを仕掛ける構図は、決して目新しいものではなく、日本の昭和初期にも似たようなことがあり、日本のバブルもNTT株など個人が参入したこともあって生まれたともいえる。いずれこういったものは価格操作などとみなされれば規制が強化される可能性も強まろう。

 話をビットコインに戻すと、インドはビットコインといった民間の仮想通貨を国内で禁止し、公的なデジタル通貨を創設する枠組みを提供する法律を、今国会の予算会期中に導入する予定とも伝えられた。

 中国も4大国有商業銀行を保護することも目的として、アリババなどのIT企業の金融事業に対して徐々に規制を強めるとともに、デジタル人民元を試験的に導入している。民間主導の通貨に対して、規制もしくは排除するのは中国やインドばかりではない。

 2021年1月に発行予定となっていたはずのリブラ改めディエムもいまだ発行されていない。もし今後、デジタル通貨が広まるとなれば、安全性や信頼性という意味では、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が主流にならざるを得ないと思う。しかし、中央銀行デジタル通貨にも例えば自然災害時に使えるのかといった問題もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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