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日銀の3月の点検の目的を探る

久保田博幸金融アナリスト
(写真:cap10hk/イメージマート)

 日銀は26日に昨年12月17、18日に開催された金融政策決定会合議事要旨を公表した。このなかから、金融政策運営に関する委員会の検討の概要にあった「やや長い目でみた対応についての議論」から3月の点検の目的を探ってみたい。

 「何人かの委員は、感染症の影響により、2%の「物価安定の目標」の実現には時間がかかる可能性が高いとの見方を示した」

 何を今更感はあるが、3月の検証にあたって「時間」という問題が大きく絡んでいるであろうことが連想される。

 「何人かの委員は、感染症の抑制と経済活動の両立というウィズ・コロナのもとでの状況を踏まえ、2%の目標をどのように実現していくか、これまでの政策効果を改めて分析したうえで、総合的に検討することが必要ではないかとの趣旨を述べた」

 3月の検証の趣旨がこれであろう。

 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みは、現在まで適切に機能しており、その変更は必要ないとの認識を共有した」

 適切に機能というか、長期金利の動きを抑え込んだにすぎないが、市場はとりあえず素直に応じていたことは確かである。

 「多くの委員は、この枠組みを前提に、資産買入れやイールドカーブ・コントロールの運営などの各種の施策について、点検を行うことが適当であるとの見解を示した」

 枠組みは変えないが、より持続性のあるものにするために点検を行うということか。それは下記の発言からも読み取れる。

 「ある委員は、金融緩和の効果と副作用を点検し、必要に応じて持続性や効果を高める改善を図るべきであると述べた」

 そうであるのであれば、このあとにあった下記の発言のなかの「柔軟」という用語がキーワードとなりそうである。

 「市場の状況に応じた柔軟な調整の余地を探るべきであるとの趣旨を述べた」

 「現在の資産買入れ方針のもとでも、市場の状況如何ではより柔軟な買入れも可能と考えるが、更なる工夫の余地がないかは検討に値すると指摘した」

 国債の買い入れの柔軟化には下記のようなスティープ化も意識されたものとなりそうである。

 「国債増発に伴い需給の緩みが生じ得ることを踏まえる必要がある一方で、イールドカーブの緩やかなペースでのスティープ化は、金融緩和の長期化と金融システムの安定の両立の観点から望ましい面もあり・・・」

 大枠は変えないが、より柔軟な買入を行えるように修正を加えるための3月の点検となりそうである。これはつまり長期金利コントロールのレンジの拡大や、ETFの買入について、より柔軟に対応することで、緩和の長期化を目指す。そのための点検ということになりそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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