2020年のサムライ債の発行額が急減し、社債の発行額が急増したのはどうしてか
2020年の円建て外債(サムライ債)の発行額は前年比約7割減の4912億円となり、2000年以降で過去最低になった(1月19日付日経新聞)。
外国政府や法人が発行する債券が外国債と呼ばれる。この外国債のことを略して外債と呼ぶ。外債のうち、国際機関・外国の政府や民間企業が日本国内で発行する円貨建ての債券を円建て外債と呼び、市場では「サムライ債」と呼んでいる。
サムライ債の発行額が落ち込んだのに対し、2020年4月から12月に国内債券市場で発行された社債は総額12兆9416億円となり、こちらはデータを遡れる1997年以降で過去最高を記録したとQUICKが伝えていた。
この両者の極端な発行額の違いはどうして生じたのか。国内の社債の発行については、日銀の長短金利操作付き量的質的緩和策によるところが大きい。この緩和策によって長期金利も低位に押さえ込まれ、コストを抑えて企業は社債が発行できることに加え、日銀による社債の買入も貢献している。
NTTの1兆円の起債に対しても、少しでも利回りを得たい機関投資家の需要は多く、応募は2兆円を超えていたように、投資家のニーズも強いものがある。それが結果として国内債券市場での社債の発行額が膨らんだ要因となった。
これに対して、サムライ債はどうして発行額が前年に比べて減少したのか。
2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大し、それを防止するためにロックダウンなどの措置がとられ、それにより経済が大きくブレーキが掛かった。日米欧の4~6月期のGDPは過去最大規模の落ち込みをみせた。
これに対して各国の中央銀行はさらなる金融緩和策を講じ、その結果、各国の長期金利が低下し、日本の長期金利との差が縮小した。この結果、これまで主要国に比べ金利が低かった日本で資金を調達する利点が薄れ、つまり日本国内での発行妙味が薄れた。
利回りに大きな違いがなくなれば、為替リスクがない自国通貨建てでの発行に切り替えたところも多かったものとみられる。
このような状況は一時的なものとなるのか。それとも金利を取り巻く環境は今後変化してくるのか。
米長期金利の動きをみると、大きな節目とされた1%を上回ってきた。これにより今後さらに米長期金利の上昇圧力が強まることも予想される。
新型コロナウイルスのワクチン普及により感染拡大がストップすれば、経済の正常化が起きる可能性もありうる。それとともに各国政府の債務悪化が意識されての長期金利の上昇が起きる可能性がある。今後、金利を取り巻く状況は大きく変化してくる可能性はありうる。