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2021年の金融市場をみる上での注意点

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 2021年がスタートした。果たして2021年はどうなるのか。

 金融市場では年末にむけた相場予想なるものがあるが、それにどれだけ意味があるのかを考えさせられたのが2020年の相場ではなかったろうか。ブラックスワンはどこに潜んでいるのかわからない、それが2020年当初に起きたパンデミックだったと誰が予想できたであろうか。

 私は短期で売り買いするディーラーであったこともあり、長期の予想には意味はないと思っている。ピンポイントで年始に年末の日経平均などをピタリと的中させても何の意味はない。そこにいたるまでの過程を含めて、すべて当てられたのであれば意味はある。しかし、それはタイムマシンでもない限り無理である。

 このため、今年の金融市場がどうなるのかということを予想するのにあまり意味はないと考えている。それでもいくつか気をつけるべきものもあり、それを確認してみたい。

 最も関心があるのが、さらに拡大しつつある新型コロナウイルスの感染がいつ収束するかであろう。過去のパンデミックをみてもいずれ収束はする。今回はそれがワクチン投与によって収束するのか、それとも自然に抗体ができて後退するのか。いまのところ読めない。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が年内に収まるという保証はない。それはつまり、東京オリンピック・パラリンピックが今年開催出来るという保証も現実にはないと思われる。それが日本国内にどのような影響を与えるのか。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、世界経済にもさらなる打撃を与えうる。ロックダウンは経済を犠牲にせざるを得ない。そして、ロックダウンは我々の社会経済の在り方をも変えるものでもあった。今後、みえてくる景色は、これまでとかなり違ったものになる可能性も当然ありうる。

 パンデミックとそれの予防策により、次元がさらに超えた中央銀行の金融緩和策と政府の財政政策が取られ、結果として政府債務は膨張した。それを中央銀行が補完するというシステムもできあがった。それはつまりMMTという理論は正しいのかが、いずれ試されよう。

 金融緩和と財政支援策などにより資金は金融市場に向かい、米国の株価指数は2020年末にかけて過去最高値を更新した。これは1989年末に向かっての東京株式市場を彷彿とさせた。1990年台の日本のバブル崩壊のようなことが起きる可能性もないとはいえない。

 そして、個人的に気になっているのが米国の政権交代がスムーズにいくのかという点である。すでに米国は分断化しつつあるとの見方があるが、バイデン氏はスムーズに新大統領に就任して、その分断化を修復できるのかも注意すべきと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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