今年の社債の発行額は過去最高ペース
NTTの子会社NTTファイナンスは準備している社債の発行総額を発行登録枠の上限である1兆円で内定したと報じられた。国内で公募される社債の一度の調達額として最大となる。発行予定総額は当初5000億円程度から段階的に増額されて、ソフトバンクグループや武田薬品工業、パナソニックの5000億円の2倍に膨らんだ格好に(7日付ブルームバーグ)。
2020年の日本市場の発行額は、このNTTファイナンスの1兆円の起債を含めて、初めて15兆円を超える見通しと8日に日経新聞は報じた。つまり今年の社債発行額は過去最高ペースとなっている。
NTTの1兆円の起債に対しても、少しでも利回りを得たい機関投資家の需要は多く、応募は2兆円を超えたとも報じられた。
最近関心の高まっているESG(環境・社会・企業統治)に関連した社債も今年は発行されている。不動産大手のヒューリックは10月15日に日本初となる「サステナビリティ・リンク・ボンド」を発行した。
「サステナビリティ・リンク・ボンド」とは企業がサステナビリティに関する目標を設定し、達成状況に応じて発行条件が変わる。投資先をこういったESG関連の株式や社債に振り向けようとする機関投資家も多い。
さらに新型コロナウイルス感染拡大とその防止のための経済活動の抑制を受け、鉄道や航空など需要減に対応した資金確保のための起債などもあった。
投資家にとっても社債への需要は強い。日銀の金融緩和策などにより、国債の利回りが押さえつけられ、10年に近い期間の国債の利回りはマイナスとなっている。少しでも運用利回りを求めて、国債の利回りよりも高い利回りの社債へ資金が向かっている。
日本国内の金融環境をみてみると、リーマン・ショック後に、日銀は実質的なゼロ金利政策を再開し、欧州の信用不安により、段階的に金融緩和策を決定し、その欧州の信用不安が後退したタイミングで、アベノミクスが登場し、量的・質的緩和策を決定。そこからさらに金融緩和策の深掘りとなり、マイナス金利政策の導入、そして長短金利操作付き量的・質的緩和策を採用した。その後、今度はコロナ禍となり、国債の利回りは押さえつけられたままとなっている。
過剰流動性相場となり株価は実体経済以上に上昇していることで、機関投資家にとって運用難とはいえないが、こと債券については利回りが求めづらくなっている。その分、資金が社債にも向かいやすくなり、発行する企業側としても低金利下での資金調達ニーズも強いことで、その結果として過去最大規模の社債発行となったと思われる。