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事業規模は73.6兆円という追加の経済対策と気になる国債増発の行方

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 政府は8日午後の臨時閣議で追加経済対策を決定する。一般会計からの歳出や財政投融資といった財政支出は40兆円程度に上り、民間支出分も含めた事業規模は73.6兆円ほどになる(8日付日経新聞電子版)。

 いわゆる15か月予算のなかでの追加の経済対策となる。財政支出は40兆円程度については、今年度第三次補正予算案で20兆円、2021年度予算案で10兆円程度の計30兆円程度を充てる見通し。このほか財政投融資と地方負担分などで10兆円を賄い、合計で40兆円規模となる。

 追加対策は民間の支出分も含めた事業規模ベースで73.6兆円ほどになる。新型コロナ対策に6兆円、コロナ後を見据えた経済構造の転換に51.7兆円、防災・減災など国土強靱化に5.9兆円を充てる。

 デジタルや脱炭素など成長戦略に18.4兆円規模の財政支出を充て、事業規模は51.7兆円を想定している。コロナ禍によって生活様式にも変化が生じており、いっそうのデジタル化の推進も必要であるとは思う。脱炭素という戦略もわからなくはないものの、本当にこの規模の予算はいま必要とされているのであろうか。

 そして予備費については、2021年度に5兆円を計上し、7兆円ほど残る20年度のコロナ対応予備費は2兆円だけ減らし、5兆円は引き続き積んでおくことで、10兆円規模を確保するようである。

 追加経済対策に絡んだ国債の増発等については来週にも発表があるようだが、すでに4月と5月にも合計で事業規模230兆円を超える対策をまとめた際にも、過去最大規模の国債増発額となっている。

 いまは日銀の大量の国債買い入れとイールドカーブコントロール、そして物価の低迷などによって国債の利回りは低位に押さえつけられている。このため、大量の国債発行も容易になっている。容易だからといって大量の国債を発行し続けられるという保証はない。見えないリスクも徐々に積み重ねられていることにも注意したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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