日本の7~9月期のGDPは回復したが戻りきれず
16日に発表された日本の7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比で5.0%増、年率換算で21.4%増となった。プラス成長は4四半期ぶりとなる。旧基準も含めた1955年以降で1968年以来の約52年ぶりの大幅な伸びとなった。
しかし、4~6月期に記録した戦後最大の年率28.8%の落ち込みから比較して、当時の落ち込みの半分強程度だけ取り戻した格好となった。
ちなみに米国は4~6月期GDPは年率で31.4%減、7~9月期は同33.1%増となり、4~6月期に失った分の7割以上戻した。ユーロ圏は4~6月期に年率40.3%減、7~9月期に同61.1%増となり、9割以上を回復していた。
このように欧米に比較すると日本のGDPの回復度合いは鈍かったといえる。
日本の7~9月期GDPの寄与度は内需が 2.1%増、外需は2.9%増となっていた。また需要項目を見てみると、個人消費4.7%増、設備投資3.4%減、住宅投資7.9%減、公共投資0.4%増、輸出7.0%増、輸入 9.8%減となっていた。
経済活動を制限した4~6月期の反動や政府の対応策などで、個人消費や輸出が持ち直した。しかし、先行き不透明感も強まり、設備投資や住宅投資は減少していた。
10~12月期は日米欧がそろって減速する見通しとなっている。特に欧米ではあらためて新型コロナウイルスの感染が拡大してきており、日本でも徐々に感染者数が増加している。
いまのところ経済活動を制限するなどするほか、新型コロナウイルスの感染拡大を止める手段はない。しかし、政府の支援策にも限度があり、ある程度経済を回すしかない。このため、ウイズコロナといった政策を取らざるを得ないため、感染拡大も避けられない。
新型コロナウイルスのワクチン開発への期待も強い。9日には米ファイザーが新型コロナウイルスのワクチンで90%の有効性を発表した。16日には米製薬の新興企業モデルナは16日、新型コロナウイルスのワクチンの最終治験で94.5%の有効性が初期データから得られたと発表した。これを受けて米国株式市場では、S%P500種やダウ平均が過去最高値を更新してきた。 しかし、米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可が出たとしても、ワクチンが行き渡るまでには時間も要する。ワクチン開発を急いだあまり、副作用等が出ないとも限らない。
それでも過去のパンデミックの経緯をみても、いずれ新型コロナウイルスの感染拡大も終息することは間違いない。問題はそれがいつになるのか、それまで果たして経済は耐えうるのか、あらためて試されている。期待感で株価はしっかりながら、景気の先行きについては不透明感が強いと見ざるを得ない。