大ヒット中の『鬼滅の刃』は日本のGDPにも貢献か
2日の衆院予算委員会で、菅首相は「私も『全集中の呼吸』で答弁させていただく」と発言した。『全集中の呼吸』と聞いてピンときた人は多かったであろう。人気アニメ「鬼滅の刃」の台詞を引用したものである。菅首相、もしくはスピーチライターがどうやら「鬼滅の刃」を観ていたか、原作を読んでいたのであろう。
2016年11月から少年ジャンプに掲載された「鬼滅の刃」は、2019年4月からアニメが放映されたことで爆発的な人気となった。その流れがアニメの続編となった映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」によってさらに強まり、この映画の興行収入は公開から17日間で157億円を突破し、歴代の興行収入ランキングでは、2009年公開のアバターの約156億円を超え、歴代10位となった。
コロナ禍にあって、映画製作そのものも停止していたことに加え、映画の劇場公開そのものも控えられていた。しかし、政府も徐々に規制を緩和していたタイミングと「鬼滅の刃」の映画の公開が重なり、歴史的な数値を叩き出している。
私も遅ればせながら、撮りため置いたアニメを全部観てから、劇場に足を運んだ。この時点でしっかりと「鬼滅の刃」の虜となっていた。それほど人を引き込む力をこのコンテンツは持っていた。そしてこのコンテンツの力は、今後GDPにも反映されることになるようである。
「大ヒットするアニメ映画、鬼滅の刃は、内閣府が12月に予定する約5年に1度の基準改定で国内総生産(GDP)にもっと貢献することになる。映画などの娯楽作品の原本を資本とみなし、民間設備投資にカウントするように推計方法を変えるためだ」と2日付の日経新聞電子版が報じた。
ただし、推計方法が変わっても現状では、全体へのインパクトは決して大きくないようである。とはいえ、「鬼滅の刃」は国内だけでなく韓国など海外でも人気が高いようである。ハリウッド映画のように世界展開が進めば、日本の経済成長率を動かす可能性がないとはいえない。
アカデミー賞を受賞した「千と千尋の神隠し」に代表されるスタジオジブリのアニメ映画、さらに「君の名は。」の新海誠監督のアニメ映画など、世界に通じるコンテンツもすでに生まれている。「鬼滅の刃」と同じ少年ジャンプ出身の「ナルト」や「ドラゴンボール」などは欧州などでも人気が高い。
「鬼滅の刃」の舞台は大正時代となっている。私自身はこの設定がどうかなと距離をとってしまっていたが、むしろこの設定が生きていたのかもしれない。そして物語の背景には「古事記」のなかの日本の神話も絡んでいるともされている。これがどの程度、海外に受け入れられるかはわからないが、GDPに寄与するほどの世界的にヒットするポテンシャルは秘めているのではないかと感じた。