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米株や米債の買いは、やや楽観的に過ぎる可能性も

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 11月4日の米国市場では、先行き不透明感を強めた大統領選挙そのものの行方よりも、議会選挙で共和党が上院の多数派を維持する見通しとなったことが好感され、株も米国債も大きく買われた。

 大統領選挙でバイデン前副大統領が優勢となる一方、上下両院選でも民主党が勝利する「ブルーウエーブ」になるとの事前の観測があったが、議会のねじれ現象は解消せず、それが規制強化や大型の経済対策の歯止めになるとの観測から、ハイテク株など買われ、米国債は買い戻された。

 米国債については10年債利回りの0.9%がひとつの節目となっていたこともあり、いったん買い戻しが入っていたともいえる。

 株式市場についても懸念で売って事実で買うといったように、ポジティブな材料に反応しやすかったとも言えたのかもしれない。

 米国債が買われた要因として、FRBによる追加の金融緩和期待も出ていたようである。

 5日のイングランド銀行のMPCでは、約1500億ポンドの量的緩和拡大を決定したが、FRBもとの期待が出たのかもしれない。しかし、5日のFOMCでは金融政策の現状維持を決定した。

 米財務省は来週実施する四半期定例入札について、期間が長めの国債の発行額を前期から拡大させ四半期定例入札で1220億ドル相当を発行すると発表した。発行額が過去最高となるのは3四半期連続となる。

 2兆ドル規模とされる追加の経済対策が講じられるのかどうかは不透明ながらも、米国債については発行額、残高ともに今後さらに積み上がることは確かではなかろうか。これによって米国債利回りの上昇がここでストップしたとも考えづらい。

 株式市場もやや楽観的に見過ぎている面もあるように思われる。米国内での新型コロナウイルスの感染拡大が、大統領選挙後に急速に収束することも考えづらい。大統領選挙そのものがもめる可能性も強まり、不透明感は払拭されない可能性もある。新大統領の就任式は来年1月20日であり、それまでに現政権が新型コロナウイルスの感染拡大防止に積極的な政策を取ることもないのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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