米長期金利の上昇の背景

(写真:ロイター/アフロ)

 米国の10年債利回り(以下、米長期金利)は、8月上旬に0.54%あたりまで低下したあとは、上昇基調に転じつつある。10月21日には0.8%台に上昇し、4か月ぶりの水準をつけた。この0.8%近辺がひとつの心理的な壁となっているとみられるが、ここを突破すると6月5日につけた0.95%が視野に入る。

 米国株式市場では10月12日あたりがいったんピークとなり、調整局面入りしているにもかかわらず、米長期金利は上昇トレンドを崩してはいない。

 欧米では新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、米国での追加経済対策の協議の行方は不透明、英国のEUとの交渉の行方も同様に不透明となっている。これからはリスク回避の米国債買い、つまり米長期金利の利回りの低下に繋がりそうだが、そのような動きとはなってはいない。

 11月3日には米大統領選挙が控えている。それがネックとなっているだけであり、いずれにしても大型の追加経済対策は実施されることには間違いない。そのための資金は当然ながら、国債発行に依存せざるを得ない。

 欧州でもやっと共同債が発行されたが、今後も経済対策がとられることが予想され、欧州での国債にも増発圧力がかかる。

 日本でもすでに2020年度の歳出規模は160兆円と過去最大となり、同時に国債発行額も過去最大規模となっている。第三次補正予算に絡んで、さらに大規模な経済対策がとられ、国債の追加発行が行われる可能性も否定はできない。

 今回の米長期金利の上昇は、今後、国債の需給面でのバランスの変化を意識した動きともとれるのかもしれない。いまのところ中央銀行の国債買い入れもあって、需給バランスが大きく崩れることは考えづらい。しかし、地球規模での債務の急激な増加は、いずれ長期金利に跳ね返ってくることも確かではなかろうか。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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