イタリアやギリシャの10年債利回りが過去最低を更新中
ここにきて欧州の国債の利回りが低下しており、イタリアやギリシャの10年債利回りが過去最低を更新してきている。
2010年の欧州で信用不安が吹き荒れていたそもそもの原因が、ギリシャやイタリアの国債の下落によるものであった。
2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。これを受けて起きたのがギリシャ・ショックである。ギリシャは2009年10月にも政権交代が起きたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。
これを受けて格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債は暴落した。ギリシャの10年債利回りは瞬間ながら45%近くまで上昇していたとされる。同様に債務状態が悪化しているイタリアやポルトガル、スペインなどにも飛び火した。これがユーロというシステムそのものへの危機となり、欧州の信用不安が拡大した。
欧州の信用不安はイタリアなどに拡がりを見せ、イタリアの10年債利回りが7%台に上昇した。アイルランドやポルトガルも金融支援を余儀なくされた水準である長期金利7%という分岐点を突破した。
ギリシャ議会は7月16日に、欧州連合(EU)から金融支援の条件として要求されていた財政改革法案を賛成多数で可決した。そしてギリシャは年金カットや増税などの緊縮実行を受け入れた。これにより、ギリシャのユーロ離脱という最悪の事態は回避された。ここからギリシャの長期金利は低下してきた。
2012年9月のECB理事会では償還期間1~3年の国債を無制限で買い入れることを決定し、FRBは12月に国債とMBSを月額850億ドル買い入れる政策を決定した(QE3)。このような積極的な政策により、欧州を主体とした世界的な市場の動揺は次第に収まってきた。
欧州の信用不安の後退時期にアベノミクスが登場し、円高調整と株価の反発を促進させた格好となったが、それはさておき、その後のギリシャやイタリアの10年債利回りは低下基調となり、2019年7月に過去最低を更新した。
ここにきてあらためてギリシャやイタリアの10年債利回りが過去最低を更新しつつあるのは、ECBの追加対策への期待もあるが、ECBや日銀のマイナス金利政策もあってそもそもプラスの利回りの国債が減少していることもある。より高い利回りを求めて、欧州の国債が買い進まれ、スペインとポルトガルの10年債利回りはゼロ%に接近しつつあり、イタリアやギリシャの国債も過去最低を更新してきているといえる。