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イングランド銀行はマイナス金利を導入するのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 13日付ブルームバーグによると、イングランド銀行(英国の中央銀行)のベイリー総裁は「英国が受けた衝撃を考えれば、マイナス金利を排除するべきではないと言明する十分な理由がある。従って、取り得る手段の選択肢にはあるとしつつ、それを実際に活用するべきかという問題に、われわれはまだ取り組んでいない」と述べたそうである。

 イングランド銀行はこれに先立ち、マイナス金利を導入しても業務に支障を来すことなく対応できるか国内金融機関から情報を集めていると発表していた。

 すでにECBや日銀は金融政策の一つの手段として、マイナス金利政策を導入している。その結果、ドイツやフランス、そして日本の10年債利回りもマイナスに落ち込んでいる。

 マイナス金利政策は金融機関の収益源ともいえる利ざやを縮小させるだけでなく、債券などによる運用利回りの低下要因となりうる。この収益を補うために、預金者からの口座管理などによる手数料収入を考慮せざるを得ない。

 預金にマイナス金利を付与することも考えられなくはないが、預金離れを引き起こしかねないため、特に個人の預金口座でマイナス金利を付与することは難しい。

 つまりはマイナス金利政策は金融機関の体力を削ぐだけでなく、預金者に手数料というかたちで負担を強いる格好となる。

 それではマイナス金利にどのような効果があるのであろうか。金利は引き下げれば効果が出るという認識から、精査金利がゼロになってしまったあとはマイナス化が意識された。しかし、マイナス化によって物価や景気に大きな影響を与えたという実証例はいまのところ聞いたことがない。

 マイナス化をしなければ景気はもっと悪くなったという人がいるかもしれないが、それはどういう理由でそうなるのか、そもそも物価がびくとも動いていないという事実を含めて説明してほしいと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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