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コロナ禍にあっての経済回復への模索

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 9月16、17日に開催された日銀の金融政策決定会合の主な意見が29日に公表された。この会合では、金融政策そのものは現状維持を決定し、市場の予想通りであった。市場の注目度は低い会合ではあったが、特に景気動向についてどのようにみているのかを、主な意見から確認してみたい。

 「わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、経済活動が徐々に再開するもとで、持ち直しつつある。」

 日本だけでなく欧米でも4~6月期のGDPは過去に例のない減速となっていた。これは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に対して、ロックダウンなどで対処しようとしたためである。

 日本でも政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、4月7日に緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日であり、この間に人や物の移動が制限され、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞った。これにより個人消費は大きく減少したのである。

 特に4~5月は政府による緊急事態宣言で個人消費が大幅に抑制されたが、6月にはその反動で回復していた。しかし、7月は再び落ち込んでいた。これは7月の天候不順も影響していたが、経済活動の再開後に新型コロナウイルスの感染が再拡大したことも影響した。

 これは欧米でも同様であり、新型コロナウイルスの感染が再び拡大しつつある。しかも、いまのところ新型ワクチンがすぐにでも接種可能な状況にもなってはいない。あくまで期待感のみ先行しているようにもみえる。

 「先行きの経済は、改善基調を辿るとみられるが、世界的に感染症の影響が残るなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、感染症の影響が収束すれば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、さらに改善を続けると予想される。」

 4~6月期に比べれば7~9月期は回復するであろうことは確かである。しかし、GDPが元の水準にまで戻るようなことは考えづらい。感染症の影響が収束すれば、改善を続けると予想されるが、その改善のめども立っていない。

 「当面は、感染症抑制と経済活動拡大の両立を模索しつつ、経済の回復ペースを慎重に点検することが肝要である。」

 まさに感染症抑制と経済活動拡大の両立を模索せざるを得ない状況にあることは確かである。景気のV字回復への期待よりも、感染をなるべく抑えながら、経済活動も元に戻して行かなければならないが、この両立はかなり困難を伴うものであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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