日本の財政事情はワニの口からワニの角に
「これまで、歳出は一貫して伸び続ける一方、税収はバブル経済が崩壊した1990年度を境に伸び悩み、その差はワニの口のように開いてしまいました。また、その差は借金である公債の発行で穴埋めされてきました。」
これは財務省のサイトにある「日本の財政を考える」のなかの、「財政はどのくらい借金に依存しているのか」というページにあった説明である。
この説明にもあるように、1990年あたりまでは一般会計の歳出と税収は同じような伸びとなっていた。ただし、常に歳出が税収を上回っていたことで、それをカバーするための一定の国債発行額が存在した。
しかし、日本でのバブル崩壊により、この状況に変化が訪れた。バブル崩壊によって金融機関に危機的状況が起き、一部の金融機関は破綻し、また合併・統合等も繰り返されることになった。
バブル崩壊による影響は金融機関だけに止まらず、日本経済に大きなショックを与えた。株価の急落もあったが、日本の雇用体系そのものも変化せざるを得なくなった。この結果、税収は大きく減少した反面、高齢化社会の訪れもあり社会保障費が大きく増加し、歳出の伸びは継続した。
これにより、歳出が増加した反面、税収が減少し、これをグラフ化するとワニが口を開けたような状況となった。
ワニが口を開けた部分の穴埋めは国債発行によって行われた。しかし、税収をみると2011年度がいったんボトムとなって、その後は増加しつつあった。2012年度、つまり2012年12月の安倍政権発足とタイミングを合わせるように税収は回復した。
2014年4月の消費増税もあり、景気も緩やかながら回復基調となったことで、税収はワニの口が開く前の水準、60兆円台も回復してきた。歳出については100兆円あたりでいったん抑えられた格好となり、多少なりワニの口が閉じつつあるところに、コロナ禍がやってきた。
2019年度の歳出が104兆円台に対して、2020年度は補正予算を合わせてすでに160兆円を超している。これはもちろん過去最大規模となる。また、税収については2019年10月の8%から10%への消費増税があったものの、コロナ禍の影響で実体経済が大きく落ち込み、税収も予想を大きく下回ることが予想される。
むろんこれは緊急時でもあったことで、一時的なことになると思われる。2021年度の歳出は2020年度に比べて減収することが予想され、その結果、ワニの口の先に角が生えたようなグラフになることが予想される。
国債発行額はワニの角によって急増し、新規国債の発行額は2020年度には90兆円台となっている。昔、小泉政権は新規国債の発行額を30兆円以内に抑えるとしていたが、その3倍もの規模の新規国債が発行されている。
非常時であり、財政支出が増加せざるを得ないことは承知している。それは国債発行によって補われることになる。それでもこれだけの規模の国債を発行していることについては、日銀がそのほとんどを買い入れているからとはいえ、いや日銀がそれほど買い入れているからこそ、そのリスクも市場参加者は認識すべきと考えている。