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家計調査にみるコロナ禍の個人消費への影響

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 総務省が発表した家計調査による2人以上世帯の消費支出をみると、4月は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比11.1%もの減少となった。さらに5月の同調査では、2人以上世帯の消費支出は前年同月比16.2%の減少となり、比較可能な2001年以降で最大の落ち込みとなっていた。

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、4月7日に緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日であり、この間に人や物の移動が制限され、この結果、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞った。これにより個人消費は大きく減少したのである。

 6月の家計調査をみると、2人以上世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比1.2%減少となり、9か月連続の減少となった。しかし、これを前月比でみてみると13.0%増となり、4か月ぶりに増加に転じ、比較可能な2000年2月以降で最大の増加幅となっていた。

 4~5月は政府による緊急事態宣言で個人消費が大幅に抑制されたが、6月にはその反動で大きく回復していたといえる。店舗の営業再開など自粛緩和の動きが急ピッチで進んだことや、特別定額給付金の消費押し上げ効果も加わっていたとみられる。

 このまま個人消費は回復しているのか。これを確認するために9月8日に発表された7月の家計調査をみてみると、2人以上世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比7.6%減少となり、10か月連続の減少となった。

 これを前月比でみると、6.5%の減少となり、前月比でも再び落ち込んでいた。経済活動の再開後に新型コロナウイルスの感染が再拡大したことや、7月は全国的に雨の日が多くなるなど天候不順も重なって減少幅が再び拡大した。この月も政府の現金10万円の一律給付で勤労者世帯の実収入が実質9.2%増となり、これが冷蔵庫や洗濯機など家電製品の支出増となったものの、全体を押し上げるまでにはならなかった。

 7月22日には東京都を除外するかたちで政府による「Go Toトラベルキャンペーン」がスタートした。当初は1兆円程度の経済効果が期待されていたようだが、東京以外でも新型コロナウイルスの感染が広がる中、これによる効果は期待されたほどではないようである。

 8月の家計調査の数字を確認する必要はあるものの、新型コロナウイルスの感染拡大は続いており、消費を自粛するというよりも、外での飲食や旅行などを自粛する動きは当面続くものとみられ、GDPを大きく押し下げている個人消費の回復には時間が掛かることが予想される。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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