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米国ハイテク株の上昇を支えた格好となったソフトバンクによる大量買い

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 株式市場や外為市場、債券市場では価格が揺れ動く。その価格変動を利用して利益を得ようとするのが投資である。短期間に利益を得ようとするのは投機と呼ばれることもある。

 短期間で利益を得るためには、目先の価格の動きを予測しなければならない。しかし、時として思わぬ動きをすることがある。そのようなときには誰が、何の目的を持って売買しているのかを探ることになる。

 市場によってはいわゆる手口情報が出されるものがある。取引所などで、どの証券会社がどの程度の売買をしたのかが公表される。しかし、これをみたからといって今後の売買に生かせるわけではない。

 私が携わった債券先物は銀行が準会員として参加していることもあり、この手口情報は公開されていない。公開されたとしてもそれは生かされなかったと思う。

 実際には取引所の証券会社を通じた売買を行っている顧客の情報が得られないと、実際売買しているのはどこなのか、誰なのかはわからない。ただし、証券会社にとっては守秘義務があり、これは絶対に漏らしてはいけないことになっている。

 このため当日の市況で、どこどこが売買した模様とか表現されるが、それは確固とした理由があるわけでなく、過去の動きなども比較してのあくまで観測である。

 しかし、時として実際に売買したところが明らかとなることがある。フィナンシャル・タイムズは6日、ソフトバンク・グループがここ数か月に約300億ドル(約3兆1870億円)相当の株式に関連したオプションに投資し、約40億ドルの含み益を得ていると報じた。

 孫正義社長は8月の決算会見で、自ら約200億円を出資する投資運用子会社を設立し、既に実験として約30社の米IT企業株を取得したことを明らかにしていた(ブルームバーグ)。

 米国株式市場は3月24日あたりからハイテク株を主体に上昇基調を続け、ハイテク株の割合が大きいナスダックは過去最高値を更新し続けていた。

 ところが9月3日に大きく下落した。ハイテク株を主体に利益確定売りが入った。特に悪材料はなかったものの、8月の上昇にソフトバンク・グループが大きな影響を与えていたことが市場で噂され、一社の売買に翻弄される懸念もあっての利益確定売りが入った可能性もある。

 手口情報はさておき、ナスダックのチャートをみると特に8月が異常な動きとなっていたようにはみえない。ただし、8月も調整らしい調整もなく上昇基調を続けたので、どこかで調整が入ってもおかしくなかった。そのきっかけが今回の手口情報であった可能性もある。

 買い手の存在は当然あったわけだが、政府日銀の為替介入などといった無理な買い支えとかではない。流れに逆らわず乗ったわけであり、これがあったからといって、ここで相場が終わるわけでもないと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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