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日経平均がコロナ禍以前の水準を回復したのはどうしてなのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 9月3日の日経平均は218円38銭高の23465円53銭となり、新型コロナウイルス感染症の流行で急落する前の2月21日の引け値を上回った。

 米国株式市場では、ナスダックとS&P500種は過去最高値を更新するなどしており、東京株式市場はそれと比べれば、やや出遅れ気味ながらもひとまずコロナ禍以前の水準を回復したことになる。

 内閣府が8月17日に発表した2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で1~3月期からマイナス7.8%、年率換算でマイナス27.8%となった。これはリーマンショック後の2009年1月~3月の年率マイナス17.8%を超えて戦後最大の落ち込みとなっていた。

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、4月7日に緊急事態宣言を出した。これが解除されたのが5月25日。この間、人や物の移動が制限され、この結果、個人消費を中心に幅広い経済活動が滞り、その結果、GDPは統計を遡れる1955年以降で最大の落ち込みとなった。

 ただし、これは人為的に引き起こされたものであり、このため人や物の移動の制限が解除されれば、元の水準に戻るとの期待もある。

 現状、7~9月期のGDPについては前期比年率で、プラスの13%あたりの予想となっている。ある程度の回復は見込まれるがV字回復とまではいかない。雇用や所得環境の悪化により、実際の数値はこれよりも低くなる可能性もある。

 それでも株価水準はすでにコロナ禍以前に戻っている。実態経済と株価が乖離しているのは今に始まったことではない。株式市場は先行きの予想や期待で動く。中央銀行の金融緩和策による過剰流動性による影響も株価上昇の根底にはあろう。しかし、それでも本当に景気が良くないとみているのであれば、それに応じた動きをするはずである。

 コロナ禍による経済への影響は大きい。しかし、それは長い目でみれば一時的であり、景気そのものはコロナ禍以前の水準にいずれ戻るといった期待も入った動きであるかと思う。

 さらに米国株式市場では、コロナ禍でむしろ恩恵を受けるネット関連などハイテク株が大きく値上がりし、その結果、株価指数全体をも引き上げられている。米国株式市場の上昇を受けて、東京株式市場も値上がりしている面もある。

 9月3日の米国株式市場では、株価上昇の原動力となっていたハイテク株主体の利益確定売りに押され、ダウ平均は一時1000ドルを超す下げとなっていた。これはここにきて調整らしい調整売りが入っておらず、ガス抜きともいえるような動きか。つまりこれによってトレンドが大きく変わる可能性は現状小さいとみている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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