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コロナ禍のなかでの世界の株式時価総額の膨張は何故か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 9月2日付けの日経新聞によると世界の株式時価総額が8月末時点で89兆ドル(9400兆円)強となり、月末ベースで2019年12月以来8か月ぶりに過去最高を更新したそうである。

 記事によると、世界の時価総額は新型コロナウイルスの感染が拡大した1~3月に20兆ドル近く減少していたものの、金融緩和や財政拡大を支えに回復に向かい、8月末には3月末に比べ3割強増えた。なかでも米国の時価総額は8月末で37兆ドルと世界全体の42%になった。

 世界の投資マネーが米国、特に米国のハイテク企業に向かっている。この背景にはFRBをはじめとした中央銀行の大胆な金融緩和策がある。国債利回りの低下などもあって、資金が成長が期待される企業の株式に向かっている構図となっている。

 GAFAと呼ばれるグーグル、アマゾン、フェイスブック、そしてアップルなどに加え、電気自動車テスラの株価なども上昇している。これらはコロナ禍にあっても、その影響を受けにくいどころか、テレワークの増加などによって恩恵を被っている企業群ともいえる。

 これらに対しコロナ禍によって多大な影響を受けている企業群も当然ある。しかし、コロナ禍による影響も長い目でみれば一時的であり、政府の支援策などもあり、何とか乗り切れるのではないかとの期待もあるのかもしれない。

 すでにコロナ禍から早期に回復したとされる中国の時価総額は、ピークだった2015年の水準を上回った。

 過去のパンデミックがそうであったように、今回のコロナ禍も社会経済情勢を切り替えるきっかけとなる可能性がある。そういった動きのひとつが米国のハイテク企業を中心とした株価の上昇であったともいえるかもしれない。

 これに対して日本の時価総額は昨年末に比べ4%減の6.1兆ドルとなっている。これは日本はコロナ禍から抜け出せずにいるため、というよりも時代を切り開く企業群が少ないためともいえるのではなかろうか。

 とはいうものの、ウォーレン・バフェット氏率いる米バークシャー・ハザウェイが日本の大手商社株を大量に購入したと報じられた。割安に放置されたバリュー株だから購入したとみられているものの、何かしら秘めている潜在力に期待した可能性もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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